第73話 裏切り警備兵

「待ってくれ! 俺はお前たちの味方になりにきたんだ」


ノエルたちを発見した警備兵は、あわてふためき、弁明する。

ノエルはそれを信じることができない。


ノエルたちは、豪商パヴェールに裏切られた直後であり、

その配下の警備兵にも信用がおけなかった。


「信じることはできない」


「俺はザルツ。この館の警備兵……いや、元警備兵だ」


「その元警備兵がどうして話しかけてくる」


「給料や待遇のことで、兵長とケンカになり、今さっきクビになったのさ。

 だが俺はいくあてがない。どうだ。俺を雇ってくれないか。

 俺は、この館の出入口や通路を知り尽くしている。

 それに、この大きな鎧や盾で、敵の攻撃を防ぐこともできる」


「ほほう」


ノエルは、ザルツの姿をじっと見た。

ザルツは大柄な男で、重厚そうな鎧や盾を身に着けている。

たしかにこれなら敵の重装歩兵を防ぐ盾にはなるだろう。


それよりも気になったのは、「館の出入口や通路を知り尽くしている」という

言葉だった。


「この館の案内をできるのか? それならしてもらいたい。

 裏口までたどりつきたいんだ」


「ここに、こっそり盗んだ館内の地図がある。

 これをたよりに進めば、きっとたどりつけるさ。

 先頭は俺が歩く。信用してくれ」


「ノエルさん。今はザルツ殿を信用しましょう」


リンツの言葉に、ノエルはゆっくりうなずいた。


ザルツについていけば、裏口にはたどり着くだろう。

だがこうなると、裏口までの通路を偵察にいかせたステラを、呼びに戻りにいかないといけない。


偵察を開始してから、しばらく時間が経っていたため、

今どこにいるか検討はつきにくい。下手に動けば警備兵に見つかってしまうだろう。


とりあえず今は、裏口を目指し、途中でステラと合流できれば万事OKと考え、進むことにした。

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