第74話 双子盗賊と盗賊妹

兄ノエルの心配をよそに、ステラは悠々自適に館内を歩き回っていた。

館内は、敵である警備兵だらけなのだが、

物陰に隠れたり、召使いのフリをして、なんとかやり過ごしていた。


「お宝みーっけ!」


ステラはある部屋の中に、高そうな宝石を発見して大喜びだ。

そして、裏口へのルートを見つけるどころか金品の奪取に気を取られていた。


「この館、警備がザルな割には、高そうなモノ多すぎ。

 どんだけ油断してんだ」


ステラがそう言いながら部屋を出たところ、

見たことのある二人に出くわして、足が止まった。


「あっ! お前は……嘘だろ!」

「げっ! なんでこんなところに!」


双子の少年盗賊ヨークとルトは、ステラを見て嫌そうな顔をした。


「なんでこんなところにって!? それはこっちのセリフだー!」


ステラも負けじと言い返す。


「俺たちはな、今、重要なものを探しているんだ。

 邪魔すんなよ」


「邪魔なんてしてないし。

 だいたい、なんなの? 重要なものって」


「それは……って、お前になんて教えるものか!」


「もしかして、変な紙切れ落とさなかった?」


「紙切れ? そんな軽い名前じゃないよ。

 ちゃんとした書状だよ」


ヨークは「重要なもの」が「書状」であると、

ついうっかり教えてしまうのだった。


「書状? それってもしかして……。

 帝国と、この館の主が手を組んでるって内容だよね?」


「なっ、なんでお前がそれを知っている!?」


ルトが驚いて、ステラを問いただす。


「さっき、床に落ちてたのを拾ったんだよ」


「嘘だろ……。はぁ。よりによってこんな奴に見つかるなんて」


「こんな奴とは失礼な!」


「とにかく、その書状を俺たちに返せ。大事なものなんだ」


「それはもうないよ」


「なにぃ!?」「そんな!」


双子はほぼ同時に声をあげる。


「だってもう兄貴に渡したんだもの。

 やばそうな内容だったし、それが伝わったせいで、

 兄貴たちと館の警備兵で戦闘が起きてしまったし」


「くそっ。お前の兄貴たちはどこにいるんだ!?

 あれがないと俺たちは……」


「大事なものを落とすほうが悪いんだよ」


「う、うるさいっ!」


「どうしてそんな書状を持っていたの?」


「事情はあとで話す。

 とにかく、お前の兄貴に会わせろ!」


「わかった、わかったってば。

 じゃあ僕についてきてよ。

 会わせてあげるからさ。

 でもその前に……」


「その前に?」


「館の金品はあらかた盗んじゃおう!」


「……なんか緊張感の無い奴」


ステラの盗人ぶりに、ヨークとルトはあきれて何も言えなくなるのだった。

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