第70話 明かされた密約
「大変! 大変だよ! 兄貴っ!」
ステラは、ノエルとリンツが会議中に、突然乱入した。
ノエルとリンツは、ステラの慌てぶりに目を丸くした。
「おい。ステラ。今俺は忙しいんだ。あとにしてくれ」
「あとにできないことなんだよ!」
「だから、あとにしろって……」
ノエルがステラを部屋から追い出そうとしたところ、リンツの横やりが入った。
「ノエルさん、待ってください。まあ、話くらいは聞いてみましょう」
「リンツがそう言うなら……」
ノエルは、しぶしぶながらも、ステラの話を聞くことにした。
「この手紙?みたいなものを見てよ。さっき拾ったんだけど、
やばいことが書いてあって……」
ステラは、密約書状をノエルとリンツに差し出す。
ノエルとリンツは、密約書状を開き、中身を確認する。
豪商パヴェールが帝国と手を組んでいること。
ミスティを捕まえると大きな報奨が出ること。
帝国で商売利権を得るためのさまざまな契約のこと。
文字を読み進めるうちに、ノエルとリンツの顔色が真剣なものに変わっていく。
「……ステラ。この書状はどこから?」
「落ちてたんだよ。この館のじゅうたんの上に!」
「この書状だけでは確約がとれませんね。
しかし事実だとすれば大変まずい状況です」
「リンツ。何か手はあるのか」
「少し探りを入れてみましょう。私に策があります」
「わかった。策を聞かせてくれ」
「今すぐミスティ様を連れて、館の外に出ましょう。
しつこく引き止めに入るようなら間違いなく怪しいです」
「わかった。今から出る準備をしよう」
ノエルとリンツはミスティに事情を説明し、
その後、傭兵団全員に連絡し、すぐに荷物をまとめて出発することにした。
ノエルたちが門の前にたどりついたころ、
門の前にはかなり多くの兵が、ノエルたちの前に立っていた。
入館したとき門番はもっと少なかったはず。
ノエルたちは、ますます怪しいと感じた。
「門番の兵士はもう少し少なかったような気がするが……。
なんで急に増えたんだ?」
「義賊団の夜襲に備えている可能性はありますが……。
とにかく門の外に出るよう、話してみましょう」
「そうだな」
ノエルは、門番の兵士に話しかける。
「済まないがここを通してくれ。
急用ができ、今すぐ出発しなければならなくなった」
「通すわけには参りません。
夜は義賊団や夜盗が横行しており、危険です」
「俺たちは傭兵だ。腕に自信はある。
館の外に出してくれ。それとも、それができない事情があるのか?」
「パヴェール様やサバラーン兵長から、
何があっても『出すな』と言われています。
……これ以上は訊かないでいただきたい!」
門番は語気を強めた。
そして、まわりの兵士たちが急に殺気だってきた。
兵士たちの槍や弓矢がするどく光る。
ノエルはすべてを察した。
ここにいる兵士たちが、明らかに自分たちに友好的でないことを。
密約書状の内容が、限りなく真実に近いことを。
「何があっても? おかしい話だな。
まあいい。そっちがその気なら突破するまでだ!」
ノエルは、自分の武器である宝刀を抜いた。
そしてノエル傭兵団の全員に呼びかける。
「みんな! この館を脱出するぞ!」
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