第84話 焼き鳥

前方からの歩兵、左右上空からの天空騎兵。

三方向からの攻撃に囲まれ、ノエルたちは危機に陥っていく。


「ここがお前たちの墓場だ! 橋の上で朽ち果てろ!」


ノエルのすぐ上のほうから、天空騎兵の1騎が飛び込んでくる。

殺気だっており、ノエルの命を確実に奪わんと狙いこむ。


天空騎兵の騎乗する、巨鳥の爪が、ノエルの頭上に迫る!


だがその爪が、ノエルの頭を切り刻むことは無かった。


「ぐあああああっ!」


悲鳴とともに、巨鳥に騎乗していた兵士は、糸の切れた人形のように落ち、

橋の下へと落下し砕け散った。


「なんだ!?」


ノエルは何が起きたかわからず、驚くばかりだった。


「ノエルさん! 助けに来ましたよ!」


クリムの声が響き渡る。

その横には、弓を構えたロシェの姿があった。

先ほど天空騎兵が落ちていったのは、ロシェの矢で射抜かれたのであろう。


「助かる!」


ノエルは感謝の意を示した。

だが、まだ残っている天空騎兵のうち1騎が、ノエルを狙う。


その1騎も、炎によって焼き尽くされ、橋の下へ落ちていった。


「私もいるわよ!」


魔導士リコッテが、クリムのうしろから現れる。

彼女の炎魔法によって、天空騎兵たちは次々と焼かれていった。


リコッテの炎魔法の勢いが強すぎて、火の粉が、木製の橋の上へと飛び散る。


それを見た敵兵たちはざわめいた。

そしてその中の誰かが大声で叫んだ。


「まずい! 橋が燃え落ちる!」

「下がれ!」


敵兵たちはパニックになり、橋の上から撤退していく。

そしてノエルたちの目の前から敵兵が消えた。


「おい、リコッテ! マジでそろそろ火事になるからやめてくれ!」


ノエルが止めに入る。


「ごめんごめん。でも敵は全部消えちゃったしいいじゃん」


てへぺろ。

リコッテは舌をちょっと出しながら謝る。あまり反省は見られない。


「……後ろの敵の気配が、だんだんと近づいてきている。

 早く前へ進むべきだ」


ロシェは、うしろに目を向けながら忠告をする。


「そうですね。一刻の猶予もありません。

 敵が怖気づいている間に、どんどん前に進みましょう!」


クリムの言うとおり、ノエルたちは急ぎ、橋の上を前進していった。

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