第85話 挟み撃ち始まる

「何っ!? 天空騎兵が全滅だとっ!」


ブラジェは部下の報告を聞き、唖然とするしかなかった。

橋の上から動けないノエルたちを、天空騎兵で一掃するつもりだったが、

計画が狂ってしまった。


しかも、部下たちは、橋の上から逃げかえってくる始末。


戦況が悪すぎる。


ブラジェは作戦の立て直しを決意した。


「ここにとどまって、ノエルたちを迎撃せよ!

 奴らは必ずここまで来るはずだ」


橋の向こうからやってくるであろう、ノエルたちを迎え撃つことにした。


数の上では、まだブラジェたちが有利。

槍歩兵・剣歩兵を前面に出して盾役とし、うしろから弓兵で狙い撃つ。

という基本的な迎撃戦術をとることにした。


「槍兵・剣兵は前に出て、弓兵は後ろから狙い撃て。

 ここから動かず、守りを固めるのだ」


「はっ」


「今はノエルたちが勢いづいている。

 迎撃態勢を整えても、苦戦は免れんだろう。

 後方のパヴェール隊と挟み撃ちできれば勝利の機会もあるのだが」


「そのパヴェール隊ですが」


「なんだ?」


「ノエル傭兵団の後方にたどり着いたと連絡がありました」


「それはたしかか?」


「はい。パヴェールの使者からのたしかな情報です」


「よし! ならば挟み撃ちだ!

 ノエル傭兵団を一気につぶせ!」


こうして、ノエル傭兵団は、橋の上の一本道にて、前後から敵に挟まれてしまった。


敵の動きに勢いが出てきたことを、ノエルやクリムもすぐに察知した。

いったい何が起きた、と思う間もなく、はるか後方に敵兵が現れたことを確認できた。


ノエルは苦しげな表情を浮かべる。

前にも敵。後ろにも敵。退路はない。


「挟み撃ちだ。とうとう始まってしまったか……」


「ノエルさん。橋はもう少しで渡り切れます。

 一気に突っ切ることにしましょう。追いつかれると厄介です。

 多少のリスクはありますが、前進するしかないです。

 幸い、後方の敵は、重装歩兵が中心です。

 足は遅く、私たちにはすぐに追いつけないでしょう」


「そうだな。進もう、クリム!」

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