第13話 重要人物

その日の夜、山賊たちは、村の攻略が失敗したことに動揺していた。


「ちっ。あのいまいましい村の自警団ども。

 もう少しで村の財産をまきあげられたはずなのに……」


山賊の首領であるガデニアは、舌打ちした。


「ガデニアの親分。そう気を悪くなさらないでください。

 まだまだ切り札はあるんですぜ」


「ヌストルテか。切り札だと?

 何を言うか。

 俺らは、帝国と手を組み、それなりの武器と食料を得た。

 だが、俺らの仕事はこれからだ。

 王国中の村々を襲って、守備兵を疲弊させ、帝国の攻め込む隙を作らせる。

 この目的の達成にはまだまだ力が足りない。

 武器も、食料も、人員も。

 何をもって、切り札というのだ」


「親分の言うとおり、武器も食料も人員もまだまだ必要です。

 俺が言いたいのは、先日とらえた娘のことです。

 あの娘は、大変な人物です」


「どういうことだ」


「帝国が血眼になって探している、とある重要人物にそっくりなんです。

 もしこれが当たりなら……俺たちは山賊を辞められます。

 帝国将軍クラスの地位を与えられるかもしれませんぜ」


「妙なことを言いやがる。

 ヌストルテ。それは本当だな」


「まだはっきり決まったわけではないですがね。

 どう見ても、あの人物に違いありません。

 直に娘に口を割らせますよ。へへへ……」


ヌストルテは、小悪党のような笑みを見せつける。

ガデニアはその情報を半ば不審に思いつつも、帝国将軍となった自分の姿を妄想するのであった。

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