第4話 お風呂
私、クリムは、シャロさんに連れられて、お風呂場に行きました。
シャロさんも一緒に入るようです。
シャロさんも、午前中のお仕事でだいぶ汗をかいたようなのです。
あと、私のこともなんだか知りたがっているようでした。
「うーん、いい気分ですっ。お風呂なんていつぶりだろう」
さっきまで汚れていた肌の色が、だんだんと白くなっていきます。気分がいいです。
横にいるシャロさんも、私を見て笑っています。
「ふふっ。
そんなになるまで、旅を続けていたなんて、すごい大変なのね。
軍師になるのは」
「軍師は、戦争の勝利のカギをにぎっていますからね。そんじょそこらの知識じゃあ
とてもできないんですよ。
大変だったんですよ、クマに追いかけられたり、追いはぎにやられそうになったり
詐欺師にお金とられたり…」
「そ、そう。大変だったのね…」(クマ? 追いはぎ? 軍師と関係あるのかしら)
「ところで、シャロさんとノエルさんは、お二人で暮らしているのですか?」
「3人で暮らしているの。もうひとり、私の下に妹がいるのよ」
「へぇ、そうなんですか。兄妹同士にぎやかでいいですね。
私なんか、ずっと一人旅してて、さびしいって感じです」
「私はクリムがうらやましいわ。
いろんなところに旅をしてて、活動的でうらやましい。
私なんて、農村でずっと一生を終えていくのかと思うと、気が滅入りそうよ。
…ノエルなんて、ずっと家の中にばっかりいるし。
クリムの行動力を少し分けてもらいたいくらいよ」
「ノエルさん、ずっと家の中にいるんですか?」
「ううん、最近の話よ。ノエルが家にひきこもっているのは。
少し前まで、傭兵団で働いていたんだけどね…。
ひょっこり帰ってきたと思ったら『傭兵団を辞めてきた』ですって。
それ以来、なんだかふさぎこんでて、ずっと家から出てこないのよ」
「傭兵団? へぇ、すごいじゃないですか。
やめた理由は気になるところですが…」
「わかんないよ。理由、話してくれないし」
「……そうですか。でも、なんとなくわかる気がします。
傭兵団の仕事は、人を殺すことも多いです。
そうやって人の命を奪っていくうちに……。
嫌気がさしたのかもしれませんよ」
「そうなのかな……」
「まあ、見習い軍師の稚拙な推測ってことで、
あんまり気にしないでくんさいっ! はははっ」
「いえ、案外そうかもしれないね。クリムの言ってること、当たってるかも。
ノエルってば、よく『俺の手は罪で穢れている』って言うのよ。
正直意味がわかんなかったんだけど、今わかったわ。
罪で穢れているってことは、人の血で汚れているってことなのね」
「……ノエルさんの手は汚れているかもしれませんね。
でもシャロさんの手はとっても綺麗ですよ」
私はシャロさんの手を、両手でぎゅっとにぎります。
突然のことに、シャロさんはびくっとしましたが、すぐに笑顔で返してきます。
「あはは。農作業とか力仕事もするから、そんなに綺麗じゃないよ、私の手は……」
「いえ、綺麗です、シャロさんの手」
すりすり。私はシャロさんの手をゆっくりと指で撫で回します。
「もうっ、クリムったら、変なこと言わないの。
って言うか、どうして私の手の話になってるの? いきなりにぎってくるし…」
「手の話題じゃだめですか? じゃあ、こっちのほうとか…」
シャロさんの手以外の部分にも触れてみました。
「きゃっ! も、もう、クリム! そこは触っちゃだめでしょ!」
あー、もうかわいい反応ですね! ほっぺた赤くさせちゃってますよ!
シャロさんはからかいがいがありそうです。
軍師のことばっかり考えてるのも疲れますからね。
こうやってシャロさんにいたずらするのも、ストレス発散に効果的なんですよね!
ちょっとしたスキンシップってやつです!
「ごめんなさい、シャロさん。
私、ずっと1人旅してて、寂しかったんです。
シャロさんみたいな友達がほしかったんです」
少しだけ落ち込んだ表情をします。……と見せかけて全部演技です。
「クリム……」
「えいっ」
シャロさんが油断したスキをついて、私はシャロさんを両腕で抱きしめます。密着。
白い肌と白い肌同士がくっついて、むにゅりとへこみます。
肌について水滴の感覚が伝わってきます。そしてその下のほのかなぬくもりも……。
「クリム、もう、冗談はやめて」
「冗談なんかじゃないですよー。
シャロさんあたたかいですー。人のぬくもりが恋しかったんですぅ」
抱きついたあと、指をあっちこっちに這わせてみたり。
シャロさんの肌は本当にやわらかいです。すごいすごいすごい!
もう何日ぶりの女性の肌でしょう!
「クリムったら! もう!」
すごい力におされました。シャロさんの手が、私の手をはねのけます。
そして私がひるんだところ、一気につきはなします。
肌同士のふれあいが……なくなっちゃいました。
「シャロさん、すごい力ですね。私の体、決して小さくないですのに」
「え…? そんなに力強かったかしら。
ま、まあ、毎日、農作業なり、自警団なり仕事してたら、ある程度力つくわ」
「ふふふ、そういう力の強い女性も、嫌いじゃないですよ…」
といいながら、私はシャロさんに近づきます。
「そうやって抱きつこうとするのはやめなさい」
「はーい」
「まったくもう…」
そのあとは、シャロさんにだいぶ警戒されつつも、楽しくお風呂に入りましたとさ。
あーあ、もっとシャロさんの肌を堪能したかったですぅ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます