第30話 進軍そして

俺たちは、山賊討伐部隊の先頭を歩く。


クリムやステラの道案内をもとに、部隊の行列は山をゆく。

以下に、現在の部隊の状況を整理する。


◆遊撃部隊

隊長:ヘーゼル

副隊長:俺(ノエル)、シャルロット(シャロ)

参謀:クリム

参謀補助:ステラ

その他:自警団数名


◆本隊

隊長:アマレート

副隊長:リッター、ザッハ

その他:騎士多数・自警団多数


◆村にて留守番

隊長:リンツ

被護衛対象:ミスティ

その他:騎士数名


さて、敵側の勢力としては、

首領ガデニア、副首領ヌストルテ。

その下にかなり多くの山賊がいるものとされている。


真相不明だが、山賊たちには、帝国の息がかかっているともいわれており、

装備品が横流しされ、山賊に渡っているという噂もある。


いずれにせよ、気を引き締めてかからなければならない。


「あれが……山賊たちの住む城です」


クリムが、少し遠くに見える城を指さす。


ごつごつとした、岩山のような白が見える。

王様のいるような豪華な城ではなく、山に築かれた武骨な城だ。


城は、もう目と鼻の先だ。

ここまできたら、いつ山賊の集団と遭遇しても不思議ではない。


先を行く、ステラとクリムの足取りが、少しだけ遅くなってきた気がする。

疲れで遅くなったわけではない。

警戒しながら進んでいるから、だんだんと足が遅くなってきたようだった。


「気を付けてください。ここからは、もう山賊のテリトリーです。

 いつ、何があっても、動じないように進むのです」


クリムから注意があった。

俺も一層気をひきしめて、あたりを警戒しながら進む。


敵は前方から攻めてくる。

そう思い込んでいた。


「敵襲! 敵襲!」


そんな声が聞こえたのは、「はるか後方」からだった。

俺は後ろを向く。

騎士たちのいる本隊付近で、なにやらごちゃごちゃと動いている。

隊列が伸び切っているため、後ろで何が起きているか、はっきりわからない。


「待ち伏せだ!」「うしろだ!」


怒号が飛び交かっている。

それでも、何が起きているのか、よくわからない。


どうすればいい?

本隊の様子を見に行くべきか?

それとも、ここにとどまるか?


「ここは通すことはできんな」


突然の声に、俺の思考がさえぎられた。

前方に、斧を構えた男が現れる。

そして、そのうしろから続々と、同じような顔をした男たちが湧く。


「俺はヌストルテ。

 ここを通りたいなら、高い通行料を払ってもらうぞ。

 ……命という名の通行料をな!」


そして言葉を続ける。


「野郎ども、かかれ! 誰も通すな!」


山賊が、俺たちに向かって、一斉に襲い掛かってくる。

数が多い! 俺たちだけでは……厳しい。

後方にいる本隊を頼りにしなければ。


「こっちだよ! こっち!」


ステラは素早い身のこなしで、クリムの手を引くと、

横道にそれながら、城の方面に向かって、走り出した。


「ステラとクリムを追うんだ! 行くぞ!」


ヘーゼルは、俺とシャロにそう命令し、駆け出す。

そうか。敵をかわしながら、城を目指すんだな。

俺とシャロは、無言でうなずき、ヘーゼルのあとに続いた。

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