第4話 生きた魔道具:魔造人間への転生 (後編)


「賢者の塔上空に高エネルギー反応を確認 急速接近中」


「ええ!? まさかもう封印が解かれたのかなぁ? 計算ではまだ先のはずなんだけど」


26代目は最悪の事態が脳裏をかすめるが、その可能性は低いと判断した


それでも、今までこの塔に、このような事態が起きたことは一度たりともなかった、油断はできない


「術式は途中で中断できないもんねぇ 結界の出力を最大に、迎撃システムを作動しちゃおうか」


「了解しました 防御結界の出力最大 迎撃システム起動 オールグリーン」


高エネルギー反応であれば、古代兵器の一つであるビーム兵器か、戦術級攻撃魔法のどちらかの可能性が考えられる


そのどちらであれ、この塔の最大出力の結界を破壊することは不可能であるし、結界に達する前に迎撃システムが無効化するはずである


「迎撃システムによる無効化に失敗 エネルギー体は間もなく結界に到達します」


「うそ~!? これってどう考えても最悪の事態だよねぇ」


「まさかこのタイミングで非常事態なんて、僕ってついてないなぁ」


「エネルギー体が防御結界に到達 ですが、結界に反応はなくそのまま通過しました」


「エネルギー体は防御結界通過後、進行方向を変えました 塔への侵入角度を再計算 この部屋に直撃します」


「え! なんですとぉ!? 何でこの塔の防御結界素通りとかありえないんだけどぉ!」


26代目は思わず素っ頓狂な声を上げてしまう


それほど前代未聞の異常事態という事なのだろう


迎撃システムに、最大出力の結界であれば、現存する兵器や魔法には絶対に破られない自信があった


それがあっさりと素通りされてしまう


万が一にも考えられない事であった


そして、まばゆい光がホムンクルスと魔導骨格の融合体に直撃した


光はどんどん融合体に吸い込まれていく




「疑似魂のインストールシークエンスに異常発生」


「エネルギー体がインストール予定の疑似魂にかわり融合体にインストールされました」


「へ? 疑似魂の代わりに入っちゃったの?」


「インストールシークエンス完了」


「へぇ、完了しちゃうんだ・・・」


「残すところ、記憶継承の儀ですが、実行いたしますか?」


「ふぅ・・・もうここまで来ちゃったんだし、良いんじゃない?」


半ば自棄になった、当代の塔の管理人


「記憶継承の儀 実行開始」


「記憶継承の儀 正常に完了しました」


「一体全体どうなっているんでしょうねぇ」


「私にも全く見当がつきません」


26代目とバベル一人と一精霊の疑問は払しょくされぬまま


今魔造人間が誕生したのである


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