第42話 魔導忍者はモンスターレスリングをプロモートする


午後になって雷蔵たちは、レストラガの町にいた


場所は冒険者ギルド レストラガ支部 ギルドマスターの執務室


中には、雷蔵と仲間の4人、ギルドマスターであるライマールに受付嬢のイェニーナ


以前に依頼していた話を詰める為である




「領主様に伺いを立てたんだが、『モンスターレスリング』にはかなり興味を持たれた様子だった」


「ただ、突然町の地下に現れたコロシアムの安全性を心配されていてなぁ」


「ギルドから依頼を出して、冒険者に泊まり込みで調査をしてもらったが、問題なしとの報告があった まぁ当たり前だがな! がはは」




『試練の洞窟』を攻略して何の因果かダンジョンマスターになった雷蔵


その際に、人の体内にも存在力が存在している事実が発覚する


そして、モンスターの様に密閉されたコア(核)を持たない人からは、かなりの量の存在力が流れ出ていることも


ダンジョンに人が集まれば、集まるほど、大量の存在力を収集することが出来る


そこで考え出したのが、ダンジョン内に会場を作り、客寄せのためのイベントを催すこと


その催しこそが、『モンスターレスリング』だ!


(雷蔵が『モンスター相撲』にしようと提案したが、即座に却下された )




町を離れる前に、ライマールと相談して、町の外れにコロシアムが突然現れたことにしてもらった


そして、『モンスターレスリング』の開催の認可を貰えるよう、領主に相談してもらっていたわけだ


王国でも、モンスター同士を闘わせる催しは開かれているが、生け捕りにできるモンスターには限界があり、強力なモンスターを用意することは難しい


しかし、ダンジョンであれば、魔力とリソースさえあれば、強力なモンスターを用意できる上に、自由に操ることが出来る


普段お目にかかれないような強力なモンスター同士の戦いは、さぞや魅力的なイベントになるだろう


イベントで享受される収入はギルドが管理しその一部を雷蔵が受け取ることになっている


もちろん多額の税収がレスラトガのもたらされるので、領主も乗り気なのだと言う




「安全性も確認できたので、領主からまずは招待客を限定しての開催を打診された」


「こちらはいつでも準備は出来ている」


第56号ダンジョンコアとは定期的に連絡を入れて準備の新着を確認している


手伝う事はないかと訊いてみたが、魔力さえあれば、数万人の観客を収容できるコロシアムの建設から、運営に必要な設備から宿泊施設、商店として使える建物まで、あっという間に用意して見せた


さすがダンジョンコア歴6000年だ


仕事が早い


「では、招待客への根回しもあるだろうから2週間後ってことにしようや」


「それで頼む」


「それと、以前からの報告で気になっていたんだがよう」


「魔境の森のモンスターの数が、どんどん増えてやがるんだ」


「2週間の時間が出来た事だし、俺たちが調査に行くが?」


「ああ、他の冒険者にも依頼してるんだが、負傷者が多くって困ってたところだ」


「分かった」




「ギルドマスターとのお話は済んだようですが」


「私には何も話すことはないんですか?」


イェニーナがご機嫌な斜めだ


「ああ、今夜食事でも、どうかなと誘おうと思っていたところだ」


苦し紛れのフォローを入れていると


今度は、パーティー内の女子4人からの殺気が


しかし、そんな場合ではない事に


今の彼らはまだ気づいていなかった


【『モンスターレスリング』で『存在力』ゲット大作戦】が始動したレストラガの町には、未曽有の危機が訪れようとしていたのだ




時間は数か月前に遡る


辺りに邪悪な魔力が溢れている、その強力な魔力によって魔物が狂暴化し、更には大量の上位個体が現れ続けていた


場所は魔境の森の奥深くにある『竜の谷』


その中でもひときわ邪悪な魔力に満ちた『邪竜の巣』


数万人の命を犠牲にして邪龍が封印された場所である




1000年は維持できる、とされていた封印は、ある者の手によって徐々に弱められ、遂に破られた


強力な結界で亜空間の世界へと幽閉されていた邪悪な存在がこの世界に再び姿を現す


体長50m 恐ろしく巨大な身体から、邪悪な魔力が溢れだしてくる


弱きものは近づくだけで、精神が蝕まれ発狂


下手をすれば死亡するだろう


「ワレヲ フウインカラ トキハナッタノハ オマエカ?」


「そうだ、この俺が、お前を封印から解き放った」


頭には二本の角、背中には蝙蝠のような翼、この世界で人から『魔族』と呼ばれ忌み嫌われる存在




手に持つは、『秘宝:操竜の杖』彼の部族に伝わる竜を使役できると言われる魔道具だった


杖にはめ込まれた魔力結晶が怪しく輝く、その力は竜を意のままに操るはずだった


「さぁ、俺に従え! 俺が魔王になるために役に立ってもらう」


「フハハハハハ! ソンナモノデ ワレヲ アヤツレルト ホンキデ オモッテルノカ?」


「マァ フウインヲ トイテモラッタ レイハ セネバナラヌナァ」


そう言うと、『邪竜』は、男に息を吹きかける


「がぁ!? なんだどうなっている 俺の体が崩れていく! 嫌だぁ 助けてくれぇ!」




男は『邪龍』の吹きかけた吐息だけで跡形もなく崩れ去った


男は強かった、それは歴代の魔王と比べても遜色がなかった、そかし当代の魔王はこの男よりはるかに強かったのだ


彼は魔王になれなかった


それを逆恨みして、企んだのが、『邪竜』を復活させその力で今の魔王を葬り去り、自分が魔王となること


だが、その思惑は、己自身の身体と共に崩れ去った



「サテ ワレヲ フウジコメタ ゼイジャクナモノドモヲ ホロボシニイクカ」


『邪竜』の前に、複数の魔物が姿を現し首を垂れるその数1000体


全てが群れを統べる上位個体である


そのうちの一体が『邪竜』話しかける


「我が主である『邪龍』様に無礼を承知でお願いがございます」


「人間どもを滅ぼす共として、我らをお連れ下さい」


「ヨカロウ ワレハ フウインカラトケテ ホンライノチカラヲダセヌ」


「ワレガ カンゼンニフッカツスルマデ」


「センポウヲ オマエタチニ マカセテヤロウ」


「ありがたき幸せ」


こうして、『邪竜』の先兵として、約10万体の魔物の進撃が始まった


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