第37話 魔導忍者は存在進化する


ここは、『魔造骨格』メンテナンスルーム


「今日俺たちは『存在進化』する!」


いつもいきなりな雷蔵さん




「でも、『存在進化』には、魔物のコアに蓄えられた『存在力』が必要なんですよね?」


的確なポイントをつくジスレア


「実は今日の日の為に、倒した魔物の『核』はゴブリンのモノ以外蓄えている」




ゴブリンの中でもロードやキングと言った上位個体


そして、試練の洞窟で倒した魔物


特に、ボブ部屋にいた51体の魔物


ミノタウロス・バーサーカーとブラック・ミノタウロスは内包している存在力が高い為、『存在進化』できる可能性が高い




「ただ、吸収した存在力は5人で均等に分配される」


「足りるかどうかは微妙なところだ」


「まぁ、これだけは試してみないことには、分からないよねぇ」


26号はそう言って、指をスナップする


テーブルの上に、ほのかに水色に光る結晶体が並んで現れる


「これはねぇ、コアから抽出した存在力を結晶化したものだよ」


『魔造骨格』には存在力の吸収機能があるから、手の平に乗せて『吸収』と唱えるだけで摂取できちゃうんだ 凄いでしょ?」


「1人が存在力を吸収すれば、魂の回廊を通して、均等に分配される仕組みになっているんだけどねぇ」


「吸収と分配の機能が正常に機能するか確認したいから、1人ずつ試してもらおうと思って、人数分に分けてあるんだよ」




「じゃあ始めてみてもらえるかい?」


まずは雷蔵から


容器の一つに右手を伸ばし「吸収」と唱える


存在力は光の粒に姿を変えて、手のひらから吸収されていく


存在力が、右手を伝い体内へと入り込み、『魔造骨格』のコアである『賢者の石』に流れ込む


そこから、他のメンバーへと流れていくのが感じられる


「どうやら、ライゾーは問題ないみたいだねぇ」


「じゃあ、後の4人も一人ずつ試していこうかねぇ」


白玲、イデア、ジスレア、クレアの順に試していく




最後のクレアが『吸収』そして『分配』された存在力が他のメンバーに流れ込んだ瞬間


「存在進化の反応を5名同時に確認いたしました」


「存在進化のプロセスが開始されます」


バベルの声が聞こえてくる




ほのかに体が光始めると、それは始まった


「ぐっ!かなりきついな」


前世で過酷な鍛錬に耐えて来た雷蔵でさえ弱音を吐く


体中が熱くなり、血管が浮き出て全身で脈動を感じるほどだ


体中が急激な変化に悲鳴を上げる


「体組織が急激に作り替えられているからです」


「魔物の中には、急激な変化に耐えきれずに死亡するものもいるようです」


「『魔導骨格』がある程度、変化の速度を緩め、痛覚を抑えています」


「それでも、このきつさ・・・死ぬやつもいるだろうな・・・」


他の4人を見渡すとみな同じ感覚を感じているようだ


呻いたり、蹲ってしまっているものも居る




(この痛みが『存在進化』の度に起こるのかと思うと、辟易するな)


と、内心毒づいていると


「『存在進化』のプロセスが完了いたしました」


バベルの声が、癒しの天使の声に聞こえた


体の痛みが、うそのように消える


心配になり、女子4人組を見渡すと、みな肩で息をしているが、気を失ったり、体調不良を訴えるものも居ない


どうやら、みな無事に『存在進化』に成功したようである




「記録にあるように、外見に大きな変化は見られないようだねぇ」


他人事のように26代目が言う


事実、他人事なのだ




「ああ、だが筋肉の密度が高まった気がするな」


ボディービルダーのようなポージングを鮮やかに決めながら雷蔵が言う




「我も、今ならばマギメタルスライムも生け捕りにできそうだ!」


白玲は特に敏捷性が高まった事を実感しているようだ


ぴょんぴょん跳ねるたびに、ぼよ~んぼよ~んと揺れる二つの物体


雷蔵は・・・ガン見していた



ちなみにマギメタルスライムとは、非常にレアな魔物で、錬金術の素材として高値が付く


しかし、臆病なうえに敏捷性が異常に高く、仕留めるにも、捕獲するにしろ非常に難易度が高い


金属を液状化させる仕組みが解明する為、冒険者ギルドの掲示板には錬金術師からの捕獲依頼が常に張り出されているほどだ




「あたいの場合、密度は変わってないが、筋肉繊維自体が強靭なものに変わった気がするよ」


元々、筋肉繊維の密度が異常に高い巨人族は、これ以上密度が上げられない為に、筋肉繊維自体を強固に作り替えたのかもしれない


イデアも、色々とポージングを決めていく


その度に、ゆっさゆっさ揺れている胸部装甲


雷蔵は・・・ガン見していた



ジスレアは、スレンダーボディーに磨きがかかったようだ


「私は、筋力は上がった気がしませんが、体が軽くなった気がします!」


と、言いながら嬉しそうにクルクルとターンを決めている


胸部装甲は・・・変化は無かった


雷蔵もガン見していなかった




ふくよかタイプなクリスさんは・・・


「うふふ」と言いながら、自分の力こぶを見つめている


ムキッっと筋肉が収縮する度に音を発している


後衛から前衛にクラスチェンジ出来そうだ




「どれくらい強くなったか分かるか?」


「皆様、それぞれ特性がありますので正確な数値にはできませんが」




「白玲様とイデア様はAランクから」


「『存在進化』でSランク相当に身体能力が向上しております」


「さらに『魔導外骨格』の働きで1ランク上がり」


「合力の活用でさらに1ランク上の強さがあると考えられます」


「SSSランク相当の力を得た言っても、過言ではありません」


SSSランクってもう竜と渡り合える戦闘力だ




「ジスレア様とクリス様は、Cランクから」


「Sランク相当の戦闘力」




「マスターに関しては・・・」


「通常であればSランク相当と言いたいところですが・・・」


「正直なところ、未知数の部分が多すぎ、判定が出来ません」


「しいて申し上げますと、白玲さんとの勝負に勝っておられることから考えるとSSS以上」


「冒険者のランクでは強さを測る尺度がありません」




実際には、冒険者のランクにS以上は存在しない


伝説級の活躍をした冒険者がL(レジェンド)ランクを与えられることがある


だがこれは、冒険者ギルドの殿堂入りの意味合いが強い


名誉を現すもので、強さの尺度とは言い難い


SSランクやSSSランクは冒険者ギルドでの正当なランクではなく、Sランク以上の強さを現すために冒険者の間で使われているもので正式なランクではない




ちなみに地上最強生物との呼び声も高いの竜種の強さは・・・


竜 SSSランク もはや天災


八大竜王、邪龍 もはや計測不能 国家存亡の危機


なのだ




自分の強さが判定不能と言われ釈然としない雷蔵でしたが


分からないものは仕方がないので、身体能力以外も試してみる異にした


第一チャクラで『合力』を練り上げる


「合力は第1チャクラは安定して使えそうだ」


「第2チャクラも連続使用しなければ使える」


一番威力の弱いとされる、第1チャクラの『合力』を使った魔導忍法でも凄まじい威力だ


それが連続して発動させても問題ないとなれば、かなりの戦力アップにつながる




白玲は、剣を高速で振ることで、鎌鼬のような現象を引き起こし、離れた敵を攻撃できるようになった


『風切斬』と名付けたようだ


これで、接近戦だけでなく中距離戦闘でも活躍できそうだ




イデアは


「あたいの強化された力を見ておいでっ!」


と、愛用の戦槌で、魔鉄鋼製の壁を吹っ飛ばしていた


同時に、戦槌も粉々に吹っ飛んだ


どうやら、彼女の戦闘力にとうとうついていけなくなってしまったようだ


がっくりうな垂れるイデアに


「オリハルコンとアダマンタイトでもっと頑丈なの作ってあげから」


と、26代目に慰められていた




ジスレアは、高速で移動しながら魔法を放っていた


まるで高速移動可能な砲台だ


『魔導外骨格』で空中からの爆撃も可能


ジスレア最強伝説の始まりか・・・と思いきや




クレアさんは、防御結界を発動し、ジスレアの魔法をことごとく弾いていた


そして、「うふふ そ~れ!」と言いながら


ジャッジメント・レイ(範囲大幅に縮小版)をジスレアに打ち込んでいた


即死級の魔法なので、あくまで近くに堕としているだけだが


ジスレアは、冷や汗をかきながら逃げ回っていた


最強の座に揺るぎは無いようである・・・


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