第28話 魔導忍者はダンジョンマスターになる(3/4)

1回の実践は100回の訓練に勝る、それが死力を尽くした戦いとなればなおさらだ


幾度となく忍び働きで、死地へと赴き生還してきた雷蔵が自ら体験した事実だ




ブラック・ミノタウロスは恐らくランクA+のモンスター


通常ならAクラスのパーティー複数での討伐が推奨されている


明らかに格上のモンスターであるブラック・ミノタウロスに勝つことが出来れば、必ず何か得るものがあるだろうと雷蔵は考えてこう言った


「なかなかの強敵だ 訓練がてらお前らだけで倒してみるか?」




戦いは、膠着状態となっていた


エルフの精霊魔法使い:ジスレアの目を狙った魔法攻撃は、警戒されており、魔法を撃つたびに、腕や大剣で防がれてしまう


盾職:イデアは、回復職:クリスの補助魔法(身体強化と盾の衝撃吸収)のおかげで凶悪な大剣の連撃を、しのいではいるが、防戦一方で攻撃に手が回らない


剣士:白玲は、自身の身体強化と、クリスの身体強化の補助魔法の2重の底上げで戦っているが、ブラック・ミノタウロスの強固な体毛に阻まれ、致命傷を負わせることが出来ない


多少の傷を負わせてもブラック・ミノタウロスの強力な再生能力ですぐに回復されてしまう




白玲はふと雷蔵の方を一瞥するが、静かにたたずみ、こちらを見つめているだけだった


その落ち着いた、自分たちを見守る眼差し


その眼を見て「お前たちなら倒せる」と信じてもらえているのだと確信した


それは、イデア、ジスレア、クリスも同じ思いだった




ジスレアは考える、まだ魔力には余裕があるが、このままでは戦局を覆せない


これまでの、戦いを振り返ってみる、まず雷蔵が敵の動きを止めて、自分とイデア、白玲で止めを刺してきた


「まずは、相手の動きを止めないと」


雷蔵でも、ブラック・ミノタウロスの足の腱を切り裂けなかった、ジスレアの魔法でも無理だろう


「それなら、沈めて固めちゃえばいいんだわ」


『泥の沼』


ブラック・ミノタウロスの足元が、いきなり泥と化し、ひざ下まで沈んでいく


『堅牢なる大地』


先ほどまで泥の沼だった地面が強固な石へと変わる




「やるじゃないか! エルフの嬢ちゃん」


待ってましたとばかりに、大剣を受け流し、相手のどてっぱらに、戦槌をぶち込む


さすがのブラック・ミノタウロススも、2重に底上げされた巨人族の怪力に身体をくの字に曲げる


「我も負けていられないなっ!」


白玲は、素早く走りこんでから、大きく飛び上がり、空中で回転、その遠心力利用して、ブラック・ミノタウロスに斬りかかる、正確には大剣も持っている相手の右手の親指を狙って


「車輪斬」


致命傷は与えられないが、遠心力を乗せた斬撃は、親指をいともたやすく切断した


親指を切断され、大剣を握れなくなり取り落としてしまう


驚異の再生力で、切断された親指が生え変わる、ブラック・ミノタウロスは怒りの咆哮をあげながら、大剣に手を賭けようとする


「させません!」


ジスレアが叫びながら魔法を行使する


『泥の沼』


正確に大剣が横たわる範囲のみに魔法を発動させる


大剣が泥に埋まった瞬間


『堅牢なる大地』


地面はまるで石のように強固に固められる


流石のミノタウロスの怪力でも己の得物を容易に取り戻すことが出来ない




さらに追い打ちをかけるべく、精霊魔法が放たれる


『水龍撃』


大剣を奪われ、憎々し気な咆哮を上げる巨体に、龍を形どった大量の水が襲い掛かる


怒涛の上位水撃魔法の連携攻撃にブラック・ミノタウロス、この戦いで始めて尻もちをつく




精霊魔法の追撃はまだ終わらない


『岩の棘・連撃』


岩の杭が起き上がろうとして台地についた手に突き立つ


杭から無双の棘が伸びそれは大地に根を張り、ブラック・ミノタウロスを地面に縫い付ける




「白玲さん止めですよぉ」


「わが神リトニッドよ、彼のものの勇気を糧として、しばし超克した力を与えたまえ」


『束の間の超克者』



魔法発動には、4つの要素がある、使用する魔力量、持続時間、効果、詠唱時間


これらのうちひとつ要素を増減させつことで、他の要素を増減させることが出来る


それには、卓越したセンスが必要だが


『束の間の超克者』は、身体強化の魔法の持続時間を極端に短くして、その効果の増大に特化した魔法である




クリスの効果特化にアレンジされた補助魔法と、自身の身体強化で最大に高まった脚力


白玲は駆ける、そして最大スピードに到達した瞬間に跳躍、そこに回転による遠心力を加え最大出力の一撃を放つ


「疾風車輪斬」


強固なはずのブラック・ミノタウロスは、あっさりと頭部を両断され即死する




「「「「勝った!」」」」


美女と美少女4人は勝どきを上げるのだった


「みな見事だった」


珍しく興奮気味に仲間を称える雷蔵


内心心配していたので喜びもひとしおだったのだ




皆で喜びを分かち合い、ちゃっかりブラック・ミノタウロスの死体と大剣も回収してしばらくすると、部屋の中央に宝箱が現れる


『センサーでスキャンしたところ宝箱には罠はありません マスター』


指示をせずとも独自に調査し報告


出来る人工精霊イブさんには、雷蔵も一目置いている


宝箱を開けると、攻略の証となるメダルが5枚と、宝石が入った袋が入っていた


袋の中に入っている宝石を見てテンション上がりまくる女子たち




『マスター 賢者の塔の技術と同タイプの転移魔法陣が部屋の奥にあります』


イブから報告の報告を聞き、雷蔵が魔法陣に近づくと魔法陣が輝きだす


『このダンジョンのマスタールームへと続く魔法陣のようです』


『特に危険性はありません』


「じゃあ ちょっと行ってみるか」


と、気軽に魔法陣に入る雷蔵


慎重さが第一の彼がイブを信頼している証


雷蔵が、魔法陣の中央に立つと転移が開始された


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