第59話 魔導忍者は賢者の国討伐連合軍と手合わせする(雷蔵編)
いよいよ、賢者の国討伐連合軍との戦争が開始された
「今現在、『賢者の国』は約10万の賢者の国討伐連合軍と名乗る者たちから侵略を受けています」
賢者の国の住人たちである獣人族達に拡声魔道具で説明する 『賢者』バベルの姿があった
獣人族達からは、不安の声が上がる
怒り猛る者
絶望に泣き崩れる者
今まで、人によって『汚らわしい存在』であると虐げられ、暴行、略奪、虐殺を繰り返されてきた
その痛ましい記憶が呼び覚まされているのだ
「これまで皆さんが虐げられてきた歴史を私は当時の管理者たちは黙って見ているしかありませんでした」
「私たちは、強力な思考拘束技術であなた達に手を差し伸べることが禁じられていたのです」
「彼らを代表して謝罪させていただきます」
「本当に申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げる
彼は見て来た、代々の管理人たちの苦悩を
絶大なる力を持ちながらそれを行使できない自分たちの無力さを嘆く姿を
気が付けばその眼からは涙があふれ出し
流れちていた
(ああ 私も悔しかったのだ)
(傍観者でしかなかった自分の無力さが)
「しかし、ご安心ください 」
「今までの忌まわしい歴史は今日で終わりです」
「あなた方には、我が主であるライゾー様が率いる『賢者の国の守護者』がいるのです」
「我が主によって『賢者の塔』の力は解放されました」
「もうあなた達を悲しませるような事は絶対にありません!」
賢者バベルは、己が発した言葉に揺ぎ無き確信をもって宣言する
広場に集まるように促された獣人族達の前に、巨大な映像投影魔道具で戦場の様子が映し出される
それを見て彼らは知ることになる、自分たちが絶対なる力で守られていることを
雷蔵は、ルネスト法国には、最精鋭部隊 エルネスト聖騎士団の前に、1人立ちはだかっていた
「お前たちは俺が相手をする」
「我らエルネスト法国の力を象徴するルネスト聖騎士団を一人で相手にするなど、舐めるにもほどがある! 」
「その大罪! 身をもって知るがいい!」
「聖域結界で動きを封じてしまいなさい」
聖騎士団の団長らしき人物が、怒り心頭と言ったかお持ちで数名の聖騎士に命じる
聖域結界:聖騎士複数人で展開するその結界に閉じ込められれば、瞬く間にすべての力を封じられ身動きすら取れなくなると言う恐ろしい結界である
それが常人であれば
「全ての力を奪われ、自分の罪を悔いながら地にひれ伏しなさい」
聖域結界に閉じ込められる雷蔵
『イブ 状態に変化はあるか?』
『いいえ、マスターの身体機能および魔導外骨格の稼働率に変化は見られません』
聖域結界は効いていなかった
確かに発動はしていた
だが、彼を縛るには威力が圧倒的に足りなかった
「ばかな!? 何故立っていられるのです?」
「結界を張る人数が少ないんじゃないか?」
「ぐぬぬぬ! 舐めおって! 結界部隊全員でかかりなさい!!!」
「圧倒的な結界の力に押しつぶされるがいい!」
数百人の結界部隊が周りを取り囲み詠唱を始めた
通常であれば、詠唱の合間を縫って反撃をするところだが、雷蔵は動かない
先ほどとは比べ物にならない強力な結界に閉じ込められる
団長は、目の前に現れた得体のしれない敵が、強力な結界の圧力に押しつぶされ、地面のしみになる姿を想像していた
だが目の前の光景は、その彼の思い描く結果とは遥かに違っていた
『イブ 今度はどうだ?』
『はい 今回は稼働率が約2%低下しました』
「どうなっているのです! 結界が利かないだと!?」
「いや今回は利いてるぞ 2%ほど動きが鈍っている」
「はぁ?」
数百人掛かりの結界は効果が出た
「おのれ!聖剣部隊切り刻んでやりなさい!」
「ほう! 聖剣を持っているのか? さぞかし強力なんだろうな?」
「ばかめ! 聖剣こそ聖騎士団が最強たる証」
「その偉大な力を、その身をもって知るがいい!」
なんだか似たようなセリフばかりを吐く団長
聖剣を持った、聖騎士たち数百人に取り囲まれる
『思考加速(クロックアップ)』
『魔導忍術:思考加速(クロックアップ)』
文字通り、『合力』による強化の力によって思考速度を加速させる
最高位のチャクラで『合力』練り上げることが出来るようになった雷蔵が最大加速させた世界は、彼以外は止まっているかのように感じる事だろう
今まさに斬りかからんとする聖騎士たちの自慢の聖剣は、一斉に半ばから断ち切られ、切っ先は地面に突き刺さる
「な!最強である聖剣が、何故半ばから折れるのです!?」
彼らにはなにが起こっているのか見当もつかなかった
「しかも、聖剣部隊全員の聖剣が一度にとはどう言うことですか!? 」
「それは、こうやって1人1人に近寄ってだな」
そう言った瞬時に、雷蔵は突如、団長の目の前に現れた
理解不能な現象に慌てる団長の為に、この現象の説明を始める雷蔵
相手は敵だ
だが、すでに相手が自分の脅威となる存在ではない事が判明した
「なに!?」
団長には、雷蔵が瞬間移動したように見えたに違いない
屈強な聖騎士たちに囲まれ安心しきっていた団長は、慌てて聖剣を抜く
団長には特別強力な聖剣の所持が許されている
(馬鹿め! この不埒者を叩き切ってやる!)
だが、その思惑は果たされることは無かった
「それで俺の愛刀:常闇で聖剣らしきものを切った訳だ」
最後の説明を終え、団長の最強の聖剣であるはずのものを、木剣の様に断ち切る
彼らの持つ武器は、雷蔵とって聖剣と呼べる領域に達していなかった
だから聖剣らしきものと呼ぶことにしたようだ
「ああ!法王様より授かった最強の聖剣が!」
その場にへたり込む団長
その心は聖剣と共に折れたようである
「もう終わりか? 他に最強の武器とかは持っていないのか?」
ドラゴンスレイヤーとか、ロンギヌスの槍とかを期待しているのだろうか?
雷蔵の問いかけに答えられる者はいなかった
「・・・無い様だな」
「じゃあ 『お仕置きの時間』だな」
聖騎士の誇りなど投げ捨て、逃げ出そうとする団員達
誇りなど元からあったのかどうか
甚だ疑わしいが
「友の、そしてその仲間たちが作り上げた大切な国を、土足で踏み荒らそうとする不埒者供」
「元より逃す気はない!」
『魔導雷縛りの術』
逃亡者たちは、雷に打たれ、体の自由を奪われて地面にひれ伏す
そこに現れる黒い影
合わせて200
200体の『賢者の国』の使者:『量産型魔導外骨格』である
「「「「「来い! 根性注入棒(改)!」」」」」
全員が根性注入棒(改)を手にすると、その姿が変化していく
頭には禍々しい角が生え
なんだか、全身が世紀末の悪人っぽくトゲトゲしていく!
頭部前面装甲は憤怒の表情をした仮面に変わり
「オシオキヲ カイシスル!」
声までが、聞く者を恐怖に陥れる『地獄の使者』モードに変わった
マギメタルスライムの研究によって追加された、金属液状化による変身機能が遺憾なく発揮されている
そこからは、エルネスト聖騎士団達の阿鼻叫喚が聞こえてくるのみだった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます