第60話 魔導忍者は賢者の国討伐連合軍と手合わせする(イデア編)

雷蔵が、ルネスト法国の最精鋭部隊 エルネスト聖騎士団と闘っていた頃


イデアは、帝国の誇る500体の魔導アーマーを要する魔導重騎士大隊と対峙していた


「お前達は、あたいが相手をしてやるよ」


「いい図体してるんだからガッカリさせるんじゃないよ?」


魔導アーマーの体長は約4m


密閉式の操縦席に制御用クリスタルが組み込まれており、それに魔力を流して制御する


それに比べ、イデアは2mの全身甲冑を纏った普通の戦士にしか見えない


普通見考えれば勝ち目のない戦い




『イブ ヘカトンケイル起動!』


『了解しました ヘカトンケイル起動』


その数100を数える紅の盾が亜空間より現れる


各盾はイデアと思考をリンクさせた人工精霊が制御しており


イデアのイメージ通りに縦横無尽に飛び回り、本来地面に盾を固定する為のスパイクは敵を貫く刃となり、重なれば強固な防壁と化す


「力比べといこうじゃないか!」




一方、500体の魔導アーマーは、1人で自分たちと力比べをしようなどと宣う愚か者の戦士を踏み潰さんと前進を開始した


ガシャン ガシャンと武骨だが重量感のある音を響かせ、隊列を組んで迫りくる魔導アーマーの軍勢


並の軍隊ならば、その光景を見ただけで絶望することだろう


『拡張連結結界:グレートウォール』


100の盾が横並びになり、結界を拡張展開、各々の結界を連結させる


そこに現れたのは、グレートウォールの名が表す通りの長大な結界の壁


「よっしゃあ じゃあいっちょ始めようじゃないか!」


盾をスパイクで固定させることなく、そのまま魔導アーマーの大群に向かって駆けだす


その動きは全身甲冑を纏っているとは思えない驚異的な速度だった




5列横隊で迫りくる魔導重騎士大隊と拡張連結結界:グレートウォールを展開したイデアが激突する


この戦を、『賢者の国』の広場に設置された大型映像投影魔道具で見守る獣人族でさえ


イデアが吹き飛ばされ踏み潰される未来しか想像できなかった


しかし、実際に吹き飛ばされたのは、圧倒的に有利に見えた魔導アーマーの方であった


1列目が吹き飛ばされ2列目と激突する、2列目の魔導アーマーはたまらずひっくり返る


吹き飛ばされた魔導アーマーは想定外の状況に一時は動揺するが、幾多の戦を乗り越えてきた経験がするに冷静さを取り戻させ、敵が侮れない力を持っていることを正しく認識させた


巨体にもかかわらず、素早く体勢を立て直した魔導アーマーは、それほど損傷を受けている様子はない


「見た目通りに頑丈で安心したよ」


5列横隊の陣形にすぐさま復帰し、今度は500体の力の全てをぶつけるべく、後列の魔導アーマーが前列にいる魔導アーマーを支えるように腕を伸ばし前進を再開した




『さすがに500体全ての力をつぎ込めば、力負けするはずはない』


魔導重騎士大隊はイデアが想定外の力を持っていることは理解したが


未だ、神が守護するイデアの力『魔導外骨格:タイタン』の力を完全に把握出来ていなかった


「ほらほらどうした?」


「帝国ご自慢の魔導アーマーの力ってのはこんなもんかい?」




信じられなかった


500の巨体が力を合わせた前進をたった1人の巨人族が平然と受け止める


力は拮抗するどころか、徐々に押し返されていった


『我も血がたぎってきたわ! イデアよ我にも楽しませよ!』


『ちっ 今からいいとこだってのに!』


『加減を忘れちゃだめだよ?』


『分かっておる、ライゾーとの約束は違わん』




『魔導外骨格:タイタン』の姿が光り輝きその姿が膨れ上がる


光が消えると5mの巨神へと姿を変えていた


「まあ、こ奴ら相手ならこの程度であろう」


さすが巨人族の祖 タイタン


相手によって、力の大きさに合わせて、体の大きさも自由自在に変えることが出来るようだ


そこからは蹂躙劇が開始された




500体の魔導アーマーをちぎっては投げ! ちぎっては投げ!


辺りには手足をもがれた無残な姿が散乱している


操縦席は無傷のようで、きちんと加減はされているようた


ストレス発散とばかりに、暴れまくる巨神の力の前に、全ての魔導アーマーが活動を停止するのに、それほどの時間は必要なかった


1体を除いて




それは空からやってきた


巨神モードの『魔導外骨格』の前に、華麗に着地したその姿は2m弱と小さい


精巧に作られた外見、動きの滑らかさから、量産品に魔導アーマーとは内包している力の違うことが一目で判る


「見事にやられたものだな」


「まさか、この私自らが出張ることになるとは」


魔導重騎士大隊の隊長が独り言のようにつぶやく


が、その声に敗北感は無く、むしろ自身の勝利に疑いのない自信に満ちていた


何故なら、彼が纏う魔導アーマーは魔法化学文明の遺跡から発掘された、オリジナルだったからだ


それは、イデアの『魔導外骨格』のプロトタイプと呼べるものだった




帝国の技術力をもってしても、オリジナルの魔導アーマーの構造を解析することは出来なかった


500体の魔導アーマーは、ゴーレムに操縦席をつけただけの模造品でしかなかったのだ


模造品であり、オリジナルの性能には遠く及ばないものの、その耐久性や、駆動力、操縦者による操作によって、ゴーレムよりも柔軟な動きが出来るために十分な戦力になっていたのだ


相手が普通の軍隊であれば




『タイタン 変わっとくれ』


『こいつとはあたいが闘る』


『むぅ! ちと暴れた足りんが、仕方あるまい』


巨神モードが解除され、制御がイデアへと戻ってくる


「ほう 大きさを自在に変えられるとは面白い」


「その魔導アーマーを持ちかえれば陛下もお喜びになる」


「そういうのは、あたいに勝ててから言ってほしいもんだね」




帝国最強の『魔導アーマー』vs『魔導外骨格:タイタン』


その戦いは、お互い両手を組み合い力比べの様相となった


勝負は互角に見えた


「ほう! 力では互角か?」


「いや、まだ一割くらいだけど?」


「なにっ? 一割の力で500体の魔導アーマーに打ち勝ったと言うのか!?」


「あんたのそれ、6000年前のもんだろ?」


「こっちは出来立てほやほやの最新式なのさ!」


「しかもオリジナルの性能も出せないあんなガラクタ、何千体かかってきたって負けやしないさ」




「最新式だと!? 帝国ですら構造の解析すらできなかったオリジナルを作る技術などどこになると言うのだ!」


「『賢者の塔』?」


「もうそのオリジナルとやらの力も分かったから、終わりにさせてもらうよ」


「もうちょい強いと思って期待してたんだけどねぇ」


「おのれ! 舐めるな!」


隊長は、最大出力の一撃を放つ! 模造品の魔導アーマーであればその風圧で吹き飛ばされる程のその威力


しかし、その一撃は、軽く受け止められる


「なっ!? オリジナルの最大出力を軽く受け止めるだと!?」


「これで全力とは」


「ほとほとガッカリだよ」


「これでおねんねしな!」


イデアは1割の出力をもって鉄拳を放つ


オリジナルの魔導アーマーは、胸部装甲をひしゃげさせ吹き飛んでいく


「あっ! やべぇ! 殺っちまったかな?」




「ううう オリジナルの魔導アーマーが手も足も出ないとは」


オリジナルの魔導アーマーからうめき声が聞こえる


イデアさんセーフ




「ヒヤッ! としたけど生きてたみたいだね」


「じゃあ 『お仕置きタイム』としますか!」


500と1体の魔導アーマーの残骸の前に、現れる黒い影


言わずと知れた、『賢者の国の使者』:『量産型魔導外骨格』である


魔導アーマーの装甲を軽く引っぺがし、操縦者を引きずり出していく


魔導重騎士大隊の面々は、もはや抵抗する気力もなし、といった体たらくであった




「「「「「来い! 根性注入棒(改)!」」」」」


根性注入棒(改)を手にしたものから『賢者の国の使者』から『地獄の使者』モードへと変身していく




そこからは、阿鼻叫喚が響き渡り・・・


魔導重騎士大隊は、500人の尻をパンパン腫らしたオブジェと化した


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