第54話 魔導忍者はエネルギー供給ネットワークを構築する(中編)


警備隊らしき者達に案内され、エルフの里へと向かう雷蔵たち


エルフの里はエルフの森の中にある


エルフの森には特別な結界が展開されており


エルフの遺伝子を持つ者以外には、強力な認識疎外の術式が発動する


エルフ以外の種族はエルフの同行者がいなければ、決して里にはたどり着けないのだ




故にエルフは、エルフの里から出なければ、危険にされされることはない


排他的な性格の為、里から出ないのだと世間一般にはそう思われている


だが実際には、魔法化学文明が遺伝子操作によってエルフと言う種族を生み出した際に、『世界樹』を敬い、守るよう遺伝子に刻み込まれた為だった


6000年経ち遺伝子の情報に劣化が生じたのか、近年では里を離れるエルフが出てくるようになった


ジスレアもその一人だった




森から漂う認識疎外の違和感が無くなると、エルフの里が不意に視界に現れる


エルフの里は魔法化学文明最盛期の技術の粋を集めた都市だった


強固な防壁と物理結界に囲まれ、魔法金属でできた重厚な門は、魔法の力で開閉されるように出来ている


門番は、これまた魔法金属で練成されたゴーレムが門を挟むように威容を誇っていた


仁王像の様な厳つさだ


「ドウコウシャニ エルフイガイノ シュゾクガ ソンザイシテイル」


「入門申請 012036番で承認済みだ」


「ニュウモンノ ショウニンヲ カクニン ニュウモンヲ キョカスル」




重量感のある門が音もなく開く、高度な重力制御魔法が使われているようだ


門をくぐると、そこはまるでSF映画に出てくる未来都市が姿を現した


高層建築物こそ無いものの、建物は規則正しく並んでおり、舗装された道には魔力モーターを搭載した車が走っている


半重力を利用した列車が主要施設に併設された駅を周回している




「陛下が王宮でジスレア様をお待ちです」


「お連れの方々もご同行願います」


王宮へは列車で向かうらしい


乗り込むと、列車は浮かび上がると音もなく走り出した


車窓からの景色がどんどん入れ替わっていく、相当なスピードが出ているようで、程なく王宮に到着した


王宮は、『世界樹』のそばにあった、白亜の美しい建物だった、屋内に入ると、美しいクリスタルの輝きが玉座に座る人物を照らしていた




「よくぞ無事に戻ったジスレア」


「そして『機神を討伐する者』達よ よくぞ参られた」


「私はこの第1番目のエルフの里を統べる王 アドリック13世だ」




「お久しぶりです お父様」


ジスレアが、『機神を討伐する者』を一人ずつ紹介していく


「私の代で、あなた方にお会いできるとは光栄の極み」


「だが、本当の事を申し上げると、魔法化学文明が滅んだ今となっては『機神を討伐する者』が現れるとは思ってもみなかったのだ」


「本当は、王の言う通り『機神を討伐する者』は現れるはずがなかった」


「だが偶然が重なって、俺が賢者としてこの世界に転生してきた」


雷蔵は、自分が『魔造人間』として転生した顛末を王に説明した




「なるほど、ライゾー殿は数奇な運命をお持ちのようだ」


「これで機神の討伐が成り、世界が救われば、これまでエルフの里を守ってきた先祖たちも浮かばれるというもの」


「まぁ、『時が来た』とは言ったが、正直なところまだ準備段階なんだが」


「『機神を討伐する者』が来たりし時は、出来る限りの助力をするように代々の王には言い伝えられております」


「何なりとお申し付けくだされ」




「我々は『賢者の塔』から来たんだが」


「この世界にある12本の『世界樹』と『賢者の塔』とでエネルギー供給ネットワークを構築したい」


「『世界樹』を管理するハイエルフに合わせて欲しい」


「分かりました 管理者様の処までご案内致しましょう」


本来ハイエルフに謁見出来るのは、本来は王のみであるらしいです




王宮の裏手にある庭園に『世界樹』が存在している


この町の事も、『世界樹』の事についても知識としては知っている雷蔵たちですら、驚愕するほどの大きさだった


何せ高さは成層圏(約8キロ)に届くほどなのだ


世界樹のすぐそばには、黒い物体が設置されており、その隣に人の姿があった


白銀の髪に白銀の瞳の少女 『世界樹』を管理するハイエルフであった




「『機神を討伐する者』の方々、ようこそお越しくださいました」


「私が第一『世界樹』の管理者です」


王がハイエルフに『機神を討伐する者』達を紹介していく


「『機神を討伐する者』の方々には出来る限りの助力をするよう命じられております」


「この度のご用件は、いかようなものでしょうか?」


「それは私からご説明させていただきます」


その声は、雷蔵が持参した立体映像魔道具に映し出された『賢者』で執事なバベルの声だった




自己紹介の後、今回の訪問の目的をハイエルフ説明していくバベル


「なるほどエネルギー供給ネットワークの構築ですか」


「はい『賢者の塔』は約6000年間『機神』討伐するための魔力を集めてきました」


「しかし、『機神』封印時に討伐隊から送られてきた情報から計算しても、必要値に達していません」


「そこで、『世界樹』の機能をアップグレードさせて頂きたいと思っております」


「私の主人であるライゾー様がこの世界へ転生された事よって『気』と呼ばれるエネルギーが発見されました」


「更に『魔力』と『気』を練成することにより我々が『合力』と呼んでいる驚異的なエネルギーを生み出すことに成功したのです」


「魔法化学文明でも発見出来なかったエネルギーを2つも発明されるとは驚きです」


先ほどまで無表情だったハイエルフがハイになるくらいだ


それくらい凄いことなのだろう




「今回の『世界樹』のアップグレードをご了承いただければ、『気』の元となる『精』の変換機能を追加いたします」


「『賢者の塔』からは、『世界樹』から送っていただいた、『魔力』と『気』から『合力』を練成し『世界樹』に還元いたします」


「『合力』の力によって、世界樹の機能は強化され『賢者の塔』に送る『魔力』と『気』以上の変換効率を獲得できるでしょう」




「なるほど、エネルギー供給ネットワークの構築は、『賢者の塔』『世界樹』双方にメリットがございますね」


「具体的な構築方法は?」


「既に術式は完成しております」


「ライゾー様に制御パネルに触れて頂くだけで術式の転送が可能です」


『世界樹』のそばにある黒い物体は、どうやら『世界樹』の制御パネルだったようだ


「分かりました管理者の権限によって、今回のエネルギー供給ネットワークの構築および『世界樹』のアップグレードを承認いたします」




こうして、『世界樹』と『賢者の塔』によるエネルギー供給ネットワークの構築が開始された


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