第10話 魔導忍者は筋肉痛になる
『魔導忍法』となずけられた術を一通り試し終わり
説教タイムが始まった
「今後、忍術を発動する前には必ず合図してください!いいですね?命にかかわることですよぉ?」
「後、ネーミングセンス何とかなりませんか?」
「せっかくクールな『魔導忍術』なんですから十分に考慮してから命名してくださいね」
「もしあなたが伝説的な活躍をした際に、ライゾーはモグラの術を使って云々とか語り継がれるんですよ?」
などと、26代目に、正座させられている間に、雷蔵は急に体が動かなくなり倒れこんだ
「死んだふりとかしても、誤魔化されませんよ! って、あれ?本当に倒れちゃっった?」
雷蔵はそのまま意識を失った・・・
目が覚めると、魔造人間として転生した際に目覚めた部屋に運ばれていた
研究段階は終了し、この部屋の役目は『魔造骨格』のメンテナンスや、『魔造人間』となった雷蔵の治療に変わったようだ
26代目が、手に魔道具らしきものをもって、雷蔵の体をなぞっている、おそらく診断用の魔道具の一種だろう
「気が付きましたか?」
「俺はどうなった?」
「どうやら、『魔導忍術』を連発してことで、過負荷がかかって魔導骨格のリミッターが働いたようです」
魔導骨格の機能の一つに、致命的なダメージを受ける前に、リミッターが働き、機能を停止させる機能があり、それが作動したようだ
「バベル、診断結果はでましたか?」
「はい、雷蔵様の魔導骨格に異常は見られませんが、生体部分、特に体中の筋肉に大きなダメージがあります」
「いわゆる筋肉痛ってやつですねぇ ぷふっ」
思わず噴き出した26代目が小さな声で「罰が当たったんですよ」とつぶやいていた
聴力は正常らしく、ばっちり聞こえた
(また、26代目の間近で、うっかり忍術が発動してしまうかもな)
と、悪魔のような笑顔を浮かべているつもりの雷蔵だが、残念ながら表情にほとんど出ていない
「魔造人間の体でこのダメージですと、普通の人体であれば死亡しているレベルです」
「現在、魔導骨格の再生の術式が発動中です」
「全回復は、約8時間後の予定です」
バベルが診断結果の報告を終えると、雷蔵は深刻な顔つきになった、表情にほとんど変化がないので、26代目が気づいたかどうかは怪しいが
もしこれが、戦場で起きていたら、雷蔵の命は無かっただろう
『魔導忍法』の多用は危険だと痛感すると同時に、どの術を何回まで使えるのか、限界を早急に知る必要があると感じた
「『魔導忍法』は強力ですが、今の生体部分の耐久力では、多用は危険ですねぇ」
26代目も同じ考えに至ったようだ
「と言う訳で、雷蔵の最優先課題は、『存在進化』することですぅ!」
「最終目標にもかかわってくる事でもありますからねぇ・・・」
ホムンクルスは人よりも長い活動時間(人で言うところの寿命)と高い身体能力を持っているが、どれだけ魔物を倒しても、訓練をしても、それ以上強くなれない、成長することはない
そのように予め設計されている
「そこで、魔造骨格には様々な機能を持った術式が組み込んであります」
26代目が、自身が作り上げた最高傑作と言うべき魔道具『魔造骨格』について説明を始める
記憶の継承を受けた雷蔵にもその知識はあったが、あまりに嬉しそうに話しているので、これは黙って聞いた方が良いと判断した
コミュ力が皆無に等しいと言っても過言ではない雷蔵
今回は意外にも空気を読めていた
魔造骨格の機能は多岐にわたるが、その中でも主要な機能は
コアである賢者の石の働きで不老(不死ではないが、コアが破壊されない限り死なない)
大きな傷を負っても、一定の時間で完治出来る再生能力
コアへの記憶のバックアップ機能(脳を破壊されても死なず、再生能力で回復する)
融合時、骨格が魔法金属の合金に置き換わるため非常に強固になると同時に、生体部分も強化される
そして強くなれないはずの、ホムンクルスにとって救いとなる機能
それが『存在進化』の機能である
『存在進化』の仕組みは、魔物の生態を研究していた第24代目賢者の塔管理者が解明した
魔物の中には、まれに上位個体と呼ばれるものが存在する
これは、その魔物が『存在進化』したことによって上位の個体へと進化したものだ推測した
そして、大量に繁殖するため、上位個体が生まれやすいとされる、ゴブリンの生態を詳しく調査した結果、魔物の中に必ず存在するコアを摂取することこそ『存在進化』の方法である事を突き止めた
魔物のコアを詳しく調べたところ、コアの内部は『存在力』(24代目が命名)と呼ぶべき成分が含まれている
その『存在力』をある一定量摂取すると、その魔物に『存在進化』が発生するのだ
強い魔物ほどコアの中に高密度の存在力が含まれていることも判明した
『存在進化』の原理を突き止めた24代目は、これが、自分たちの最終目標を達成するための力になると確信し、『疑似コア』と呼ばれる魔道具と設計図を残した
実際に、ホムンクルスの技術で生み出したネズミ(身体能力が成長しない)に疑似コアを埋め込んで、試験を行い、ゴブリンのコアから採取した存在力を摂取させ、『存在進化』を成功させた
『存在進化』したネズミは、身体能力が強化され、進化の段階が進むと、簡単なコミュニケーションが出来るほどの知力の向上が認められた
幸い、『存在進化』したネズミには、魔物のような狂暴化の兆候もなかった
最終的に、24代目は自分の体に『疑似コア』を埋め込み、自信を被検体として実験を行うようになる
この『疑似コア』こそその後『賢者の石』と呼ばれるようになる存在である
「24代目はかなりのチャレンジャーだったようですねぇ」
「自分を披検体にするなんて私にはできません」
(あんたは次の代のホムンクルスを魔造人間の被検体にしたわけだが?)
雷蔵は、そう突っ込みたくなったが、『結果良ければすべてよしだ』と自分に言い聞かせた
そう、忍びは耐え忍ぶからこそ忍びなのだ
ゴブリンのコアから採取した存在力ではなかなか進化の兆候は見られず、オークや、トロールなどのコアから得た存在力を使ってようやく『存在進化』を果たした
ネズミと同じく身体能力の向上、知力の向上があったと研究記録に記されている
魔造骨格のコアである『賢者の石』には『存在進化』の為の術式が組み込まれている
「これからの事を考えると『存在進化』することは必須となります」
「なので、ライゾーには冒険者になってもらいますよぉ」
「高難易度のダンジョンを攻略したり、強力な魔物を倒して英雄と呼ばれるようになる」
「冒険者は男の浪漫ですよぉ!」
「早速準備に取り掛かりましょう!わくわく」
他人事だと思って、無茶ぶりする26代目なのだった
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