第9話 誕生!魔導忍法


「と言う訳で、またここにやってきた訳ですが・・・」


場所は、昨日と同じく魔法の実験エリア


しかし26代目の外見が昨日とは大きく変わっていた


昨日の苦い体験から、万全の体制を整えたのだ!


普段はあまり装飾を好まない26代目であるが、全ての指に魔道具の指輪がはめられていた、防御結界と結界強化の術式が込められているらしい


何時ものローブの上にケープを羽織っており、無数の魔力結晶がちりばめられている、どうやらこれらの魔力結晶にも防御結界と結界強化の術式が組み込まれているようだ




魔道具の複数装備は制御が難しく、誤動作を起こしたり下手をすると魔力が暴走して爆発したりすることもあるらしく、紙装甲の魔法使いが防御力を上げようと実力以上の数の魔道具を装備してしまい爆死と言う悲しい事故が、過去に多発した事もあるらしい


それをきっかけに、世界中の魔道具屋に装備の限界数を測定する魔道具が設置が義務付けられたそうだ


魔道具屋も試着中にいきなり爆発・・・は御免こうむりたいのは至極当然のことであろう




同じ系統の魔道具ほど複数装備の際に術式に競合が起こり、誤動作を起こしやすいのだが、この数を装備しても問題ない事が、26代目の実力の高さを物語っていた


そして、その自信の高さを表しているのか、物凄いどや顔だった


「今日の私は一味違いますよぉ!」


「今現在、これだけの防衛力を持っているのは、この世界で私だけと言っても過言ではありません! うふふふのふ」


「という事は、26代目が、今日の試し撃ちの的になってくれるという事だな」


「ちょっ、待っ、おまっ! 絶対私に向けて撃ったらだめですからね!絶対ですよ!!!」


「それは、絶対ダメと言っときながら、実は撃てよと言う、賢者の塔の知識にあった『お約束』と言うやつか?」


「それはあの伝説の『ネットウブロ』の事ですか!?」


まだ人類が惑星間航行の技術も持っていなかった遥か昔にそう言った儀式があったそうだ


「いやいやいや、今回は本当にダメですよ?」


「もし撃ってきたら、もう絶好ですよ」


「明日から口ききませんよ、て言うか口きけなくなりますよ!私の命的に!!!」


「そうかそれだけ気合が入っているから、てっきり自分の身を犠牲にしてまで付き合ってくれるのかと思ったんだが」




と言う、どうでもいいようなやり取りがあって、ようやく実験開始となった


「いいですか? チャクラは第一段階まで!混ぜる魔力も少しずつですよ? いいですねっ!?」


気と魔力を合わせて練り上げる、膨大な知識が保存された賢者の塔の記録にも、今まで試されたと言う事実は確認されなかった


気の使い手は、武闘家と呼ばれる職業のほんの一部であり、武闘家でも魔力で身体強化や属性付与による攻撃技で戦う者の方が多かった


また、それぞれ片方でも高難易度まで習得するには膨大な時間が必要で、両方を高めるのが非効率的であったことも理由の一つだろう


なので正直、26代目にも何が起こるか分からない、いきなりドカ~ンと、きのこ雲が出来ても不思議ではないのだ


口を酸っぱくして念を押すのも、仕方のないことだと言えた


「・・・分かった」


雷蔵的には、第3番目のチャクラくらいまで試してみたかったが、確かに完全に制御できるまでは、上位のチャクラは使わない方がよさそうだとも思った 26代目がうるさいし


「後、3キロほど離れください お願いします!」




まずは、昨日最初に使った『俊雷の術』から


まずは第一のチャクラに精と魔素を集める


これは簡単に意外に簡単にできた


そしてこの二つを合わせて練り上げる


少し違和感を感じるが、これも何とかなりそうだ


しかし、二つの力が完全に一つになった瞬間、爆発しそうなほど力が膨張する!


(ぐっ!? これはまずい!)


精神を集中して、少しでも気を抜けば弾けそうになる力を何とか抑え込む


(ふぅ、なんと抑え込めたか)


(しかし、第一チャクラで、この威力とは)


(第3段階とか止めておいてよかった)


ヘタをすれば力の暴走で爆死の可能性もあった


想像以上に大きな力を感じながらも恐れることなく、逆に楽しんでいる




(まずは風の性質を持たせて膜を貼る)


昨日の反省点はしっかり押さえている


今の力を開放して走った際の衝撃波の威力を考えると必然と言えた


残りの力に雷の性質を持たせて全身にいきわたらせる


体の表面にわずかに放電現象が起こる


(よしっ!俊雷)




前回同様、26代目には雷蔵の姿は忽然と消えたように見えた


だが、今回は爆発音は聞こえない、風の膜がうまく機能しているようだ


予想以上のスピードが出てしまい、止まるタイミングを誤ってしまったようだ


(まずいな・・・停まれない)


このままだと26代目と正面衝突する 悪い予感しかしない


何とか寸前で軌道修正し、26代目の横をすり抜け止まる


停止は上手くいった・・・と思ったのだが



「うわぁ、なんじゃこりゃ~」


「結界が全部吹っ飛びましたよっ! ああお気に入りのローブが破れてるぅ」


(まずいな、また怒られる)


「すごいじゃないですかぁ!ライゾーさん!」


(む? 何故だ褒められている・・・のか?)


「俊雷の術は、早さが前回の倍マッハ6くらいは出てますね! ハイパーソニックってやつですよ!」


バベルから計測結果を聴いて興奮冷めやらぬと言った状態の26代目


マッハ5を超えるスピードの事をハイパーソニックと言うらしい


「しかも、鎌鼬の術も同時に発動してますよ! 私の魔道具で強化しまくった多重結界全部突き破るとか、どんな威力ですか!」


「この術使ってダンジョンの中を走ったら、罠が発動する前に走り抜けれるわ、魔物はみじん切りに出来ますよ!」


「ああ、冒険者いないか確認しとかないと、巻き込んじゃって殺人罪ですけど 」


「鎌鼬の術を発動しないで走れるようにもならないとですぇ」


凄いけど、改良点が必要なようです




ちなみにほかの術は・・・


炎玉の術:「青いですね」


「青いな」


何が課と言うと 


炎の色が青かった


直径1mもある巨大な青い炎が浮かんでいる


「蒼炎ってやつだな、始めて見た」


過去に青い炎を操る伊賀忍者も居たそうだが、絶えて久しい


「この世のあらゆるものを燃やし尽くす炎と言われているが、それほどじゃなさそうだな」 


「どれどれ、ちょっと的を出しますので、それを狙って撃ってみて下さい」


26代目がそう言うと、程なく1kmほど先に、地面から幅が10m厚さ1mはある巨大な岩の壁が競り上がるせり上がってきた


爆発をかなり警戒しているらしい


「遠いな よしっ 撃つぞ」


音速は出ていないが時速200キロは出ていそうだ、2秒と掛からずに壁にぶち当たる


前日のように爆発・・・すると思いきや、あっさりと壁を突き抜ける、壁には直径1mの穴がぽっかりと開いており、それをあけた炎球は2秒と掛からず元の場所に戻ってくる


「爆発っ!はしないで貫通?」


「えっ!? 戻ってきましたね・・・」


開いた口が塞がらないと言った26代目に


「当たっても爆発しなかったな」


「なんだか動かせそうな気がしたから戻してみた」


「若干小さくなってるみたいですねぇ、壁幾つ壊せるか試しますか」


20の壁を突き破ったところで、炎球は維持できなくなり消えた


(嫌がらせにあの岩壁は魔法で強化したのに20mの厚みも貫通させるってどんだけですかっ!)


26代目が心の中で突っ込んでいるころ


「青い炎だから蒼炎球の術・・・いや操れるから操炎球の術・・・か?」


「どっちでもいいですぅ!」




水龍撃の術:「水の結界ですか?」


「昨日ちょっと考えてな、攻守両方できる術だ」


26代目と雷蔵、二人の周りには半球状の水の結界(?)に包まれていた、結界は超高速で渦巻いている


「確かにこれなら火属性の魔法を防ぐのに理想的ですね」


「渦の勢いで物理攻撃にもある程度耐えられそうです」


「で攻撃の方なんだが、連続で撃てると思う」


「連射ですか?」


あらかじめ100m先に出してもらった岩壁に、水で形造られた龍が次から次へと襲い掛かる


10匹目の龍がぶつかると壁は跡形もなくなっていた


「結構大きな水龍を10体分も撃ったのに、結界の勢いが変わりませんね」


「ああ!撃った分だけ気と魔力を練り直して補ってるからな」


「どんだけぇ~!」


「水龍の巣の術って名前はどうだろう?」


「う~んいまいち?」




土遁の術:「む!雷蔵が消えた、土遁の術ですか?」


「お~い!」


雷蔵が、1kmほど離れた場所から顔を出す


「地中を移動したんですか~?滅茶苦茶早くないですか?」


「土竜の術だな」


「モグラですか・・・」




鎌鼬の術:「ぐおぉ、巻き込まれるぅ、死ぬぅ!」


油断している間に、雷蔵の手のひらから発動された竜巻に巻き込まれそうになる26代目


竜巻の中は無数の風の刃が渦巻いている、巻き込まれれば跡形もなく切り刻まれるに違いない


って言うか、水平に打ち出された竜巻に飲み込まれた壁は、あっという間に消え去った


「ふぅ、万全の準備をしたはずなのに、昨日より命のの危険を感じるってどういうことですか?」


「まぁ敵を倒す術だからなぁ」


「鎌鼬の巣の術って名前はどうだろう?」


「あれ、それってどこかで聞いたような名前ですねぇ・・・はて?」


ネーミングセンスはかなり残念な雷蔵であった




雷縛りの術:「うわぁ危ない!」


雷蔵のを中心に半径50m


術の範囲自体は、前回と変わっていないし、威力に変化は無いように見える


雷蔵のすぐ隣で油断していた26代目は思いっきり巻き込まれて、思い切りキレる


「撃つ前に言ってくださいってさっきから何度も言ってますよね!?」


「ん? あれ? 雷に当たったのに、結界はなんともないですねぇ」


「ああ!敵意のない者には無害になったみたいだな」


フレンドリーファイアの心配なく発動できる、危機的状況で一発逆転を狙える術に成り得る


「みたいって効果未確認で撃ったってことでいいですか?」


「雷縛りの術(改)がいいだろうか?」


「・・・・」


この後26代目の説教で一日は終わっていくのであるが・・・




「ちょっと後で説教確定ですが、ネーミング的な部分も含めて!」


「結果は素晴らしいの一言ですね」


「魔法と忍術の融合とでも言いましょうか」


「これはもう『魔導忍法』と名付けるしかないですね!」


お話の流れ的にも!


こうして『魔導忍法』は誕生し


「じゃあ俺は『魔導忍者』って事だな」


同時に『魔導忍者』が誕生したのでした!


めでたしめでたし


※お話はまだまだ続きます


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