第66話 魔導忍者は魔力の深淵を垣間見る 1/6
『賢者の国討伐連合軍』を見事退けた雷蔵率いる『賢者の国の守護者』たち
大型映像投影魔道具で、その光景を見守っていた獣人族達から歓声があがる
中には、喜びからか、はたまた安堵からか涙を流す者の姿もあった
しかし、喜んでいる者たちばかりではなかった
「どうして殺さない!?」
「俺たちは何も悪いことはしていない」
「なのに奪われ、踏みにじられ、犯され、殺された」
「俺は『人族』を許さない!」
「我々は復讐のために戦ったのではありません」
「あなた達を守るために戦ったのです」
『賢者』バベルは語る
「確かに『人族』は欲深く、時に愚かなことをします」
「自らの欲望を満たすために、弱者から奪い、踏みにじり、犯し、殺す」
「あなた達は、何年もいえ何千年も、その被害に遭ってきた」
「彼らを憎むのも、当然の事でしょう」
「だからと言って殺してしまえば、あなた方も彼らと同じ罪を背負うことになるのですよ?」
「我が主はそれを良しとしませんでした」
「だからこそ、生きて償わせることにしたのです」
「映像の中で、敵国の兵士たちが『お仕置き』をされているのをご覧になったでしょう」
「ただの木の棒で打たれているように見えますが、そうではありません」
「あの棒で打たれた者は、死ぬほどの痛みを味わっているのです」
「彼らが再び『賢者の国』を襲うと言うのであれば」
「その度に、死ぬほどの痛みを味わうことになるのです」
「何度でも、何度でも彼らが改心するまでそれは続きます」
「その方があなた達にとっても、意趣返しになると思いませんか?」
「恨むなとは言いません」
「許せとも言いません」
「でもこれだけは、覚えておいてください」
「『賢者の国』は過去を振り返るためではなく、あなた達が前を向いて歩いていけるようにと願い創られたことを」
機神との戦いの為に創り出され
罪もなく何千年もの間、虐げられ続けてきた獣人族達
異議を唱えた獣人も口をつぐんではいたが、直ぐには納得できるものではない
でもいつか、その日が来ることを願うバベルだった
戦いが終わりしばしの休息をとり
雷蔵たちはダンジョンコアの救済と
まだ訪れていない獣人族達の集落を巡っていた
そのほとんどは、『賢者の国討伐連合軍』との戦闘が始まる前に終わっており
程なくして、知り得る限りの獣人族達の集落は周り終えた
バベルは、代々の『賢者の塔』の管理者たちが作り上げた国造りの計画を拡張した
現在の首都を中心に、同規模の12都市を周囲に段階的に作り上げていく
首都の収容人数は約10万人で、今後移住希望者はそれを上回ることが予想されたためだ
いずれ自分たちは機神討伐の為に、この星を離れることになる
その前に、『賢者の国』の規模を出来る限り大きくしておく必要があった
『賢者の国』の首都は雷蔵によってクオン(久遠)と名付けられた
明るい平和な暮らしが、これから先もずっと続いていくようにと
この世界には120のダンジョンが存在している
そして今、雷蔵たちは今、最後のダンジョンを訪れている
そこは『天空の塔』
この世界で唯一、空に浮かぶタワータイプのダンジョンだ
『賢者の塔』の記録によると、当初は地上にあったダンジョンが3000年ほど前に突如として周辺の大地ごと空に浮かび上がったのだそうだ
このダンジョンには、罠とゴーレムしか現れない
まるで侵入者を拒んでいるかのような意志を感じる
特に強敵に出くわすことなく、最終階層である塔の頂上までたどり着く
とは言え、ロックゴーレムから、アイアン、プラチナム、ミスリル、オリハルコン、アダマンタイト製のゴーレムとも遭遇している
ビームを撃ってくるゴーレムまで
イデアの盾やクリスの結界を破ることは出来なかったが
ダンジョンとしての難易度も高く、上級の冒険者でも攻略は難しいだろう
雷蔵たちでなければ
第3段階まで変形する、巨大ボスゴーレムも難なく討伐した
普段感情の起伏が乏しい雷蔵が珍しく
変形する度に「おおっ!」と声をあげていた
討伐後、周囲を調べていると
『マスター 壁の一部に空間の揺らぎを検出しました』
イブ・レーダーに反応ありだ
『亜空間への入り口か?』
『マスタールームの入り口である可能性が高いです』
6000年間メンテナンスしていない為に、誤動作を起こす可能性のあるダンジョンコアの救済のために来たのだ
入らないと言う選択肢はなかった
ここで雷蔵たちは、運命の出会いを果たすことになる
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