第67話 魔導忍者は魔力の深淵を垣間見る 2/6


亜空間の入り口を抜けると


壁の一面には無数のモニターらしき装置が設置されていて、ダンジョン内の様子が表示されている


部屋の中央には、高さが1.5mほどの黒い立方体の台座が設置されておりその上に白い球体が浮かんでいた


ここまでは、他のダンジョンのマスタールームと同じだった




ダンジョンコアの分体らしき少女もいた


何故か白衣に金髪ツインテール


赤い眼鏡をかけている本人の趣味なのか?


そして明らかに違うのは、部屋の壁際には長机が配置され、その上には所狭しと機材が並んでいる事


怪しげな色をした液体で満たされたビーカー、加熱用魔道具で焙られているフラスコ


棚にはガラスの瓶に保存液が入れられ、中には未知の生物が浮かんでいる


こちらを見たような気が


目が合った気がする


気のせいだと思いたい




そして、部屋にはもう1つ人影があった


その姿は、黒い表地に赤い裏地のローブを羽織った骸骨


スケルトンなどでは決してない、その存在感、内応する魔力がそれを証明していた


こちらを振り向いた、その双眸には赤い炎が揺らめく


視線を向けられる


それだけで圧力がかかり、吹き飛ばされそうなる


強大な力を持つ者は、その素振り一つ一つに力が宿る




リッチ:不死者(アンデッド)と呼ばれる存在の中でも


ヴァンパイアと並ぶ最高位の存在


死霊術師が禁術を用いて変化したもの 


無限の知識を求める魔術師が永遠の命を目指したなれの果て


などと言われている


弱い人間では近寄っただけ命を落とすとまで言われている存在


そのような存在が言葉を紡ぐ


さぞかし呪いめいた恐ろしい呪詛に違いない




「いやはや、吾輩の自慢のゴーレムたちを倒して、ここまでやってくるとは想定外なのであ~る」


想定外の言葉遣いだった


「俺たちは『賢者の塔』からダンジョンコアの救済に来た」


「俺の名はライゾー」


「我の名は白玲!」


「あたいはイデア」


「ジスレアと申します」


「クリスですぅ」




「いやはや、今までの冒険者であれば、問答無用で攻撃してくるのにおかしいと思ったのであ~る」


「『賢者の塔』の使者なのであれば、納得なのであ~る」


「『賢者の塔』を知っているのか?」


「もちろんであ~る」


「あれは吾輩が設計した塔であ~るからして」


「何だとっ!?」


これには雷蔵もビックリなのであ~る!




「吾輩は、魔法化学国家ペリグレットの最後の生き残りメイザースなのであ~る」


なんとあの伝説の


偉大なる魔術師その人であった


「あ!? 死んでいるので生き残りではないのであ~る」


ちょっとうっかりさんだった


「最後の存在?」「最後の・・・」とぶつぶつ独り言を言い出したが


「あの偉大なる魔術師のメイザース様なのですか!?」


自分の『魔導外骨格』にその名をつけた尊敬する魔術師なのだ


ジスレアが食いつかないわけがなかった




「それは正しくないのであ~る」


「ふと人恋しくなり、人の振りをして世俗にいたころにそう呼ばれてしまい、散々否定したのであ~るが」


「我は、魔術師ではなく、魔導士メイザース」


「魔術を極めし者なのであ~る」


「まあ極めしは、少し言い過ぎであ~るな」


「魔術の探究者と言った方が適切な表現であ~るか」


「そして『魔力の理のその先を見出した』者でもあ~る」




「魔力の理のその先を見出したとはどういうことですか!?」


いつもよりアグレッシブなジスレアさん


「全ての物事には価値が存在するのであ~る」


「エルフのお嬢さん」


「その質問の答えには、途方もない価値があるのであ~る」


「故にタダでは教えられないのであ~る」


「答えを求めるならば対価が必要なのであ~るよ」


「そして魔術の資質も言わずもがな、なのであ~る」




「もし答えを求めるのであ~れば、吾輩の試練を乗り越えるてもらうのであ~る」


「下手をすると命を失うことになるのであ~る」


「私にやらせてください!」


やる気満々のジスレアさん


モジモジキャラは見る影もない


と思いきや


「ジスレア任せたぞ!」


雷蔵の言葉に、顔を真っ赤にしてモジモジするジスレアさん


モジモジキャラ卒業はまだまだ先のようだ




「うむ 命を失うと聞いても少しの動揺もないとは」


「そこのライゾー殿の言葉には、思いっきり動揺していたようであ~るが」


「中々の覚悟なのであ~る!」


「試練への挑戦を認めるのであ~る」


「ここは手狭であるからして場所を変えるのであ~る」


メイザースは指をスナップする


「ここなら試練に耐えうるのであ~る」


亜空間内に強力な結界を張って作り出した空間のようだ




「ほう!? 四大精霊を宿した杖であ~るか」


「素晴らしい杖を持っているのであ~るな」


一目でジスレアの杖に四大精霊が居候しているのを見破った


「「「「なんだとっ!?」」」」


大精霊という強大な力を宿す存在


それも四大精霊すべてを内包して傷ひとつ入らないばかりか


それは更に美しく光り輝く


超高品質の居心地のいい魔力結晶の中


居候が見つかって、テヘペロする四大精霊の姿があった




「では、試練を始めるのであ~る」


「お嬢さんには吾輩の魔法を自身の魔法でもって打ち消してもらうのであ~る」


「始めは小手調べであ~るが」


「徐々に強力になるので覚悟するのであ~る!」




こうして、『魔力の理のその先を見出した』者


魔導士メイザースの試練が開始されたのであ~る!



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