第64話 魔導忍者は賢者の国討伐連合軍と手合わせする(ジスレア編)


ミンガラム連合 セーヴラン、レストーネ、ルトハイムといった小国が、大国に対抗するために集まった連合国


彼らの軍は、市民たちに無理やり武器を持たせた、ハリボテの軍隊だった


その事実は、監視用に各国の要所に潜入させた『魔導ドローン:アルゴス』によって確認している




そんなミンガラム連合軍に対するは、『魔導外骨格:メイザース』を纏いし精霊魔術使いのジスレア


元々、精霊魔術の能力の高い種族であるエルフのジスレアは『存在進化』によって、歩く戦略兵器と化していた


さらに、彼女の杖、正確には杖にはめ込まれた魔力結晶の中には四大精霊が居候しており、大精霊の力を借りればその戦力は桁違いに跳ね上がる




ミンガラム連合から司令官として任命された男は、まともに戦争をする気など無かった


訓練さえしていない民兵たちを捨て駒にし、自分は安全な場所で高みの見物を決め込むつもりだった


あくまでこの戦争に参加したその事実だけが重要だったのだ


適当に戦っている間に、ゲルベルト帝国とエルネスト法国が勝利すれば


領土の分配、捕虜になった獣人族たちを奴隷にして労働力の確保


何よりも、『賢者の国』の使者たちの強力な武具


そして『賢者の国』建国時に貢物として持って来たような財宝の数々が手に入る


ミンガラム連合を形成している各国の王たちは、無力な市民2万人の命を犠牲にしてそれらを手に入れるつもりだった




『そろそろ進軍させるか?』


司令官がそう思った時、報告が入る


「大変です、帝国軍が壊滅、エルネスト聖騎士団も同じく壊滅しました」


「聖騎士団以外のエルネスト軍は今だ健在、現在戦闘中とのことです」


「何だと!?」


敵戦力は高々1000、対して『賢者の国討伐連合軍』は約10万の大群である、負けるはずがないだからこそ、数合わせの軍隊を作り参戦したのだ




司令官の脳裏にすぐに『撤退』の文字が浮かぶ


しかしそれはもはや手遅れだった


「敵が現れました!」


「敵の数は200 気付かぬ間に、わが軍を包囲しております!」


「そしてわが軍の前方から隊長格らしき者が、空より接近しております」




「200名程度いくら民兵でも2万もいるのだ蹴散らせ」


「それが、全く歯が立ちません」


「何だと!?」


「では、隊長格を射落とせ!」


「弓兵に狙わせましたが、弓が標的をそれてしまい一切命中しません!」


「何だと!?」




突然、あたりが暗くなる


昼間であるにもかかわらずだ


何事かと空を見上げると信じられない物体が空に浮かんでいた


「や、山が浮かんでいる!?」


それは、落下すれば2万の軍勢を全て押しつぶせるほどの巨大な岩の塊だった


雷蔵と契約して老人からイケメンへと進化した


土の大精霊ノーム:王土が力を貸してくれたのだ


『どうじゃわしの力 凄いじゃろう?』


イケメンになっても話し方はおじいちゃんのままだった


『凄いです! ありがとうございます!』


帝国や法国の魔術師団総がかりでも、これほどの質量の岩を生み出し、それを浮かべ続けるなど不可能


いかに『存在進化』したジスレアの魔力でも、大精霊の力を借りなければ、さすがにここまでの威力は出せない


四大精霊の杖の威力の凄まじさよ




巨大な岩塊の後方に浮かぶ人影が一つ


緑の全身鎧にマントを羽織っていた


頭には絵本に出てくる魔女の帽子をかぶっているように見える


手には、超高品質な魔力結晶がはめ込まれた杖


『魔導外骨格:メイザース』を纏った


ジスレアの雄姿であった


普段はモジモジしている女の子だ!




山の様な岩を創り出し、それをたった一人で浮かべている


魔力を感知できるものがいたのであれば、その強大な魔力に驚愕した事だろう


残念ながらこの2万の軍隊もどきには、一人も存在しなかったが




「ミンガラム連合軍の者達よ 聞きなさい」


かなりの距離が離れているのにはっきりと聞こえてくる、澄み切ったその声


魔法を使っているようだ



『ウィンド・トーク』風に声を乗せ、遠くまで響き渡らせる風系魔法



「あなた達は、戦いの経験のない一般市民だと聞いています」


「武器を捨て投降するのであれば、手荒な真似はしません」


ジスレアの降伏勧告である


普段のようにモジモジしていない!


むしろハキハキしている




「あれが落ちてきたら確実に助からねぇ」


「こんなの勝てる訳ねぇよ」


「俺この戦が終わったら結婚するのに!」


死亡フラグ立ててる者もいるが


全員戦意喪失し武器を捨て去った




「あなた達は家族を人質を取られて無理やりこの戦いに参加させられた」


「なので、罪には問いません」


「ですが、司令官及び将校は、れっきとした軍人」


「責任を取ってもらいます」


「『お仕置き』です!」




ちなみに人質となっている家族は雷蔵と『地獄の使者』達によって無事解放された


ミンガラム連合の上層部は徹底的に『お仕置き』され無事では無かったが






市民を見捨てて、司令官及び将校たちは自分たちだけ逃げ出そうとしていた


しかしその企みもむなしく、あっさりと捕まる


木の棒を持った、全身黒尽くめの戦士たちに


全身トゲトゲで、超怒った仮面をつけた『地獄の使者』達に


『根性注入棒(改)』でお尻を連打される彼らの悲鳴が戦場に響き渡る


だがそれを気の毒に思うものなど、この場には一人もいなかった




こうして、ミンガラム連合軍は一度も戦わずして壊滅した


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