第56話 魔導忍者は一夜にして王国を創る
世界中の『世界樹』のアップグレードと『世界樹』と『賢者の塔』を結ぶエネルギー供給ネットワークの構築を終え
雷蔵たちは『賢者の塔』へ帰還していた
エルフの里の間をつないでいる半重力列車で移動したため
ネットワークの構築は彼の予想よりも遥かに速く完了した
「今回のアップグレードと『合力』による機能強化で『世界樹』の太陽光から『魔力』への変換効率は20%上昇」
「『気』への変換機能を問題なく機能しております」
「こちらから供給できる『合力』の格が上がれば更なる変換効率の向上が見込めるでしょう」
「そうなれば『賢者の塔』で6000年間蓄積してきたエネルギー量など1年間待たずして確保することが可能になります」
彼には珍しく興奮気味に話す
『賢者』なのに執事な恰好を続けている人工精霊 バベル
いかに優れた『賢者の塔』と言えども、『魔力』を確保することにおいて
太陽光から『魔力』を変換する機能に特化した『世界樹』には大きく劣っていた
しかし今は世界中にある12本『世界樹』から『魔力』だけでなく『気』の供給も受けられるようになり大量の『魔力』と『気』を確保できるようになった
「これで計画をさらに進められるな」
「はい 『クリエイト・キングダム』を発動する段階に達しました」
『クリエイト・キングダム』:その名の通り、王国を作り出す超巨大術式魔法
これによって、移住の希望者が増えてきている獣人族達を収容できる『賢者の国』を創り出すのだ
「いよいよライゾーも国王になるのかい? 惚れ直しちゃうじゃないか」
「我はライゾーであれば国王どころか、この世界の支配者にもなれると確信している!」
「これで、代々の管理者の夢が一つ叶いますね!」
「わくわくしますぅ!」
女子たちも、魔法で国を創り出すと言う大事業に興奮気味だ
「では ここはやはりマスターに発動の術式を起動していただきましょう!」
「いや別に俺でなくてもいいだろう?」
雷蔵は辞退しようとした
だが、それは許されなかった
「では『クリエイト・キングダム』発動」(ボソッと)
賢者の塔の制御パネルに手をかざし魔力を流し術式を発動する
雷蔵の魔力が必要なのは発動の術式を起動するときだけで、後は『賢者の塔』にため込まれた魔力を使用する
『クリエイト・キングダム』は賢者の塔に蓄えられた魔力の300年分 全体の約5%を費やして発動される
まさに超巨大術式魔法なのだ
なのに、発動者の覇気がなさすぎだ
だが、皆それを期待してはいなかった
自分たちのリーダーたる彼が発動させることに意味があるのだ
賢者の塔は、大陸の中央に位置する広大な砂漠のこれまた中央にそびえ立つ巨大な塔だ
しかし今まで、その存在を知る者はいなかった
なぜなら建造されてから6000年間、光学迷彩と認識疎外の結界そして、砂嵐によってその姿を隠されてきたからだ
そうあの宇宙人で超能力者で2世的な超人の本拠地のように!
クリエイト・キングダムの術式が発動すると、『賢者の塔』が輝きを放ちだし、結界と砂嵐が瞬時に消え去る
膨大な魔力の波動は、大陸中へと広がっていった
魔力を感知できる者は、その強大な魔力の奔流をまともに感じ取ってしまい
ある者は戦慄し
ある者は驚愕し
またあるものは恐怖のあまり震えた
そこからは、この世界の魔法の常識では信じられない光景が繰り広げられた
一瞬にして城壁が地面から迫り出すように姿を現し
防御結界が展開される
城壁は賢者の塔を中心に半径1.5キロ 約700ヘクタールに及ぶ範囲を囲む
その後は、まるで早送りの映像を見ているかのように瞬く間に、舗装された道、上下水道を完備した様々な用途を想定した建造物が出来上がっていく
城壁の周囲の砂漠は広大で肥沃な農地へと姿を変え強固な柵、見張り台まで姿を現した
約10万人の住人が生活可能な王国は
一夜どころか1時間足らずで世界にその姿を現出させた
しかしこれは、代々の『賢者の塔』の管理人たちが何千年という膨大な時間をかけて計画し
必要な錬金触媒を収集
術式を組み上げていったからこそ成し遂げられた偉業なのだ
王国が今日完成することは
レストラガの領主である辺境伯:アルフーゴ・フォン・レスラトガ
冒険者ギルトのマスターであるライマール
受付嬢のイェニーナ
そして移住を希望する獣人族達にも伝えている
イェニーナなどは、「『賢者の国』に冒険者ギルドの支部が出来た際には、転勤を希望します!」とライマールの両肩をがっしりと掴みを揺さぶっていた
元冒険者でガチムチマッチョなライマールをぶんぶんと揺さぶるイェニーナ
女性とは時に、驚異的な力を発揮する生き物なのだ
しかしさすがに一日で建国すると言ったとき
みな信じられないと言った表情を浮かべていた
こうして一夜城ならぬ、一夜王国は完成した
これからは移住者の移送
この世界の国々への『建国』の表明と忙しくなる
これは同時に、突如現れた王国と肥沃な大地を狙う者たちも動き出すことを意味していた
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