第22話 魔導忍者は宴会を開く

「こちらが新しい冒険者カードとなります」


「確かに」


Cランクと書かれたカードを受け取る


これで、ダンジョンへの入場が可能となる


ダンジョンに入ることが出来れば、魔物を効率よく倒せるようになり、『存在進化』する効率を格段に上げることが出来る


これで、雷蔵のいや、賢者の塔の代々の管理者の悲願達成への入り口に立つことが出来た




「報酬の清算を頼めるか」


『存在進化』は賢者の塔プロジェクトの中でも重要事項である


だが今は、報酬の受け取りも重要である


何故なら、このところエンゲル係数がうなぎのぼりだからだ




「まず、正式に受注していただいた、ゴブリン集落の偵察依頼の報酬が銀貨2枚」


「ゴブリンの集落掃討の依頼は事後処理しており、お支払いが可能です」


「まず、ゴブリンの討伐報酬ですが通常のゴブリン討伐数90体で 銀貨36枚」


「上位個体6体はDランク相当と判断された為 銀貨12枚」


「更に上位の個体2体はCランクと相当と判断されたため 金貨2枚」


「集落の中で、首領格、最上位の個体であったと判断された1体は、Bランク相当と判断されたため金貨15枚」


「集落の特別報酬は、その集落にいた最上位の個体の討伐報酬と同額となりますので金貨15枚」


「合計いたしまして金貨32枚と銅貨50枚となります」


「思ったより多いな」




「モンスターの討伐報酬はモンスターのランクが上がるほど危険度が増すため高くなります」


「そして、通常は、モンスターのランクと同ランクのパーティーで討伐することが推奨されていますので、単独で討伐と言うのは、リスクが高い為、それほど多くありません」


「ましてや集落となると、数パーティーで討伐隊を編成して討伐を行いますので」


「なるほど 今回は俺一人が受け取れるからか」


「強者の特権と言って良いのかもしれませんが、くれぐれも無理はなさらないでくださいね」


「イェニーナにはいつも世話になっている」


「良かったら、また食事でもご馳走させてくれ」


「本当ですか!? 楽しみにしていますね!」


嬉しそうに笑うイェニーナ


その笑顔を見れただけでも、誘ってみて良かったと思う雷蔵


女性を食事に誘う


初心な忍びである彼にしては大手柄だ




大金を手にして、ウハウハな雷蔵の背後に忍びよる脅威の影


「坊や 待ってたわよ!」


「我らが勝負していた間に起った事件の詳細な説明をお願いしたい!」


すっかりほったらかしにしていた鉄壁とイデアと白き野獣の白玲


両手でボキボキ音を鳴らしながら雷蔵に迫ってくる


が彼は平常運転だ


「ああ それより腹が減った、食事しながら話す」




そうやってわちゃわちゃしていると、先ほどから、酒場にいる冒険者から熱い視線を感じる


「ゴブリン隠しの首トン ゴブリンの集落を独りで潰したんだって?」


「ああ、俺も聞いたぜ! なんでも、集落には、ゴブリンの死体が1体どころか、血の一滴すら残ってなかったんだってな」


何だか内容と訊いていると怪談話のよう内容だ


「しかも異例の4階級特進らしいぜ!」


「マジかよ!それってこの国の冒険者のなかじゃあ最速記録じゃね?」


「というより前例がないらしい それって凄くね!?」


「さすが ゴブリン隠しの首トンだぜぇ」


そんな会話が聞こえてくる


『ゴブリン隠しの首トン』


二つ名が2つくっ付いちゃって、もはや本名が入っていない




「よう!今回は大活躍だったなぁ!」


「「やったなぁ! ゴブリン隠しの首トン!」」


ヴィルクスにヨルンとヨルクが声をかけてくる


「救助隊で世話になったな」


「なあに、楽に稼がせてもらって、こっちが礼を言いたいくらいだぜぇ」


「「そうっすよね兄貴!」」


(そういえば、登録した日に、ヴィルクスには、歓迎会を開いてもらったな)


(あれは楽しかった)


前世では大勢で飲む機会など無かった雷蔵にとって初めての体験


なにより彼らの気持ちが嬉しかった




「お前たち、昼飯はまだか?」


「ああ、今からここで食おうと思ってきたところだぜぇ」


「冒険者になって、初めて大金が稼げた」


「今日は、俺に奢らせてくれ」


「まじか!じゃあ遠慮なくごちになるぜぇ」


「「やったぜぇ!」」


そして、酒場にいた連中にも声をかける


「今日は、俺のおごりだ みんなも好きに飲み食いしてくれ」


「まじかぁ!今日は飲むぞぉ!」


「おい、今日の依頼は明日に延期だ!」


「そうだな、仕事どころじゃねぇ!」




みんなに、酒と食事が振舞われる


酒場はてんてこ舞いの忙しさだが、酒場の従業員たちは嫌な顔もせず、いやむしろ楽しそうに働いている


楽しそうに食事をするお客さんたちを見て、自分たちも楽しくなれる、従業員さんたちが素敵すぎだ




「じゃあみんな! ゴブリン隠しの首トンことライゾーの大活躍に乾杯だぁ!」


「「「「乾杯!」」」」


大宴会が始まった、みんな楽しそうに飲み食いしている


この場にいる冒険者たちは、雷蔵に詳しい話を聞きたくて仕方がないようだが、みんな遠慮している


何故なら


「さぁて、詳しい話を聴こうかねぇ」


「我も興味津々だ!早く話を聞かせて下され!」


ターゲットが、猛獣二匹にすでにロックオンされてしまっていたからだ


手練れの冒険者でもこの会話に入っていくと言う冒険は命の危険を感じてしまうようだ




「期待するほど、面白い話はないぞ」


食事をしながら、ゴブリンの集落殲滅作戦の話を、猛獣から食いしん坊キャラにジョブチェンジした二人に話して聞かせる


もっぱら、二人は食事に神経が集中しており、聴いているのか怪しい


冒険者たちの中には、楽しく飲み食いしながらも、聴力を限界まで強化して雷蔵の話に聞き耳を立てている者もいた


それだけ、雷蔵が成し遂げたことが前代未聞であったのだ




「なるほどねぇ あたいも、坊やはかなりの実力があるとは思ってたんだが、まさかゴブリンの集落を単独で壊滅させるとはねぇ」


「何を言うか!ライゾーはこの我が勝負を挑んで一太刀も入れられなかった強者ぞ!」


「まぁ 俺には秘密兵器があるからな」


「その秘密兵器の話ってのは、いつ聞かせてくれるんだい?」


「それは おいおいだな」




彼には使命があり、その使命を達成するために決戦兵器である『魔導骨格』『魔導外骨格』がある


おいそれと他人に話せる内容ではない


秘密を明かすのは、真の仲間と認めた者にだけ


雷蔵はそう心に決めていた




猛獣から解放された後は、冒険者たちからの質問攻めだったが、珍しく雷蔵は饒舌だった


雷蔵の話に驚いたり、冗談を言い合って笑い合う彼らの中に自分がいる


その事が嬉しかったからだろう


その証拠に、彼の顔にも笑顔が零れている



こうやって、宴会は夜まで続いていくのであった


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る