第85話 魔王は魔造魔王になる


『賢者の国』の支援で、先住民たちの生活は一変した


『クリエイト・フォートレス』で生み出された砦の守りは強固で、彼らの生活範囲内に現れる魔物は、『賢者の国の使者』達によって即座に討伐されるため、魔物の襲撃による死者は出なくなった


幾度となく歴代の『魔王』の命を奪った勇者が軍勢と共に現れる様子もない(これは冒険者リュウセンが連れまわしているためだが)




「ライゾー お前たちのお陰で、俺が守るべき民は救われた」


そして、雷蔵は人族にとって悪の象徴であるはずの『魔王』である自分を友と呼んでくれた


「俺様は、お前たちの恩に報いたい」


「『魔王』である俺様が出来ることは戦う事だけだ」


だが、十氏族最強の存在である『魔王』の力ですら雷蔵たちの力には遥かに及ばない




「俺様は、お前たちと共に『機神』と闘い、この世界を救いたい」


その為には、更なる力がいる


「だから、俺様を『魔導骨格』で『魔造魔王』にしてくれ!」


借りを返すために借りを作る


自分でも矛盾した、無茶な願いだとは分かっているが、それしか方法が浮かばないのだ




「既に、魔王バルバール専用の『魔導骨格』及び『魔導外骨格』の開発に着手しておりますよ」


当然のことのように『賢者』バベルは答える


「ジスレアが、良い素材を提供してくれたので、楽しみにしているといいのであ~る」


大魔導士メイザースも協力してくれるようだ


神エルネストが『賢者の国』へ堕とそうとした隕石を分解圧縮した立方体


それは、この星には存在しない、貴重な金属の塊だった




「えっ! そんな即答なの?」


バルバールは、てっきり難色を示されると思っていた


「もとよりカスタムの『魔導外骨格』を作ってもらうように頼んでいたんだ」


「『魔導外骨格』の力を完全に発揮させるには『魔導骨格』は必ず必要になるからな」


こうして、魔王バルバールの願いはあっけなくかなえられ『魔造魔王』が誕生することとなった




「これが俺様の『魔導外骨格』か!」


人類の為に設計された『魔導骨格』であったが、『賢者』と『大魔導士』の最強頭脳タッグに不可能は無かった


ただし、時だましの結界内で作業していたため、相当な時間を費やしたのは間違いない


こうして無事に『魔造魔王』となった魔王バルバールは自分専用の決戦兵器を見つめる


「ヤベェ! 滅茶苦茶カッコいいじゃねぇかよ!!!」




光沢を放つ灰色の装甲、頭部には魔王バルバールの象徴ともいえる角


他の『魔導外骨格』に比べ武骨ともいえるその形状だが、『魔王』にどストライクなデザインだったようだ


「隕石に含まれていた大量の希少金属にマスター自ら『神・合力』を注いでいただきました」


「そのおかげで、『魔造骨格』今までで最高の強度、身体強化性能を誇る逸品となりました」




「早速、装着してみたらどうだ?」


「おう、そうだな! どうすればいいんだ?」


「『魔導外骨格』の前に立って、「装着」と言えばいい」


「よっしゃあ! 装着!」


瞬時に液体化した『魔導外骨格』が自分に滑りよって、体にまとわりついたときには


「ひぃ!」


と『魔王』らしからぬ声を出していた (笑)




「生態認証及び、魔力特性認証の認証を確認、装着者:魔王バルバールと認識しました」


「アクティベイション・シークエンスに移行します」


「オペレーションシステム『イブ』起動」


「システムオールグリーン」




「・・・初めまして、魔王バルバール」


「私は、『魔導外骨格』の操作をサポートするために造られた、人工聖霊『イブ』と申します」


「あんたがイブか? よろしく頼むぜ!」


「よろしくお願いいたします」


「ではアクティベイトの為の最終シークエンスを実行させていただきます」


「この『強化外骨格』の固有名称を登録してください」


「固有名称?」


「この『強化外骨格』に名前を付けて頂きたいのです」


「なるほどな! ・・・ならばスター・ロード星の支配者で頼むぜ!」


スター・ロード 星の支配者


『魔王』かこの星を支配するつもりなのだろうか


「固有名称を「スター・ロード」で登録完了」


「アクティベション・シークエンス完了」




「うっひょう! 俺様最強!」


「最強の『魔造骨格』に最強の『魔導外骨格』!」


「これなら、苦汁をなめさせられたお前らにも勝てそうだぜ!」




「ほうっ!それは我への挑戦と受け取っていいのだな! 」


「どれ、どのくらい強くなったか確かめてやるよ!」


「私も全力で精霊魔法使ってもいいって事ですよね?」


「じゃあ!私もぉ!」


「「「「アポカリプスは無しだぞ!」」」」


「えぇ! 今回もダメなんですかぁ?」


いや今回だけじゃなくて、今後もダメな方向でお願いします!(;'∀')




白玲には


愛剣『剣星竜の剣』で切り刻まれ(切り刻まれたのは『魔導外骨格』のみで、その『魔導外骨格』も瞬時に再生したが・・・)




イデアには


雷撃の戦槌で身動きを封じられたところを、盾で吹き飛ばされ(強化外骨格は無事でしたが、中の人が戦闘不能状態となりました 汗)




ジスレアには


獄炎魔法で焙られ、嵐雷魔法で錐揉みにされ、氷結魔法で凍らされ、石檻魔法で閉じ込められた(散々脱出を試みたが、微動だにせずギブアップ 泣)




『神・合力』を全開に発しているクレアには


対峙した瞬間『今闘ったら死ぬ』と『魔王』の感が囁いた為・・・土下座して許してもらった Orz ← 魔王バルバール




「なんだよ!最強の『魔造骨格』に最強の『魔導外骨格』じゃなかったのかよ!?」


確かに『魔導骨格』と融合して『魔造魔王』と成った時、そして『魔導外骨格』を纏った時に今までとは比べられない力の高まりを感じた


なのに、白玲達には手も足も出なかった


「それは、造られた当初の性能が今までで最高と言う意味であって、現在の強さを意味しているのでは無いのですよ?」


バルバールの不満をいさめるように『賢者』バベルが説明する




「お前はまだ『合力』を使いこなせていない」


「そして『魔造骨格』と融合したとはいえ、『存在進化』もしていない」


「そして何より今までのような力任せの戦い方では、一生俺たちに勝てないぞ?」


雷蔵にまでダメ出しを食らってしまった




「フハハハハハ!俺様が『最弱』から『最強』へと至る伝説の始まりか!? ヤッテやるぜ!」


数時間後、真っ白に燃え尽きたような状態からようやく脱した魔王バルバール




はたして、『魔造魔王』となったバルバールの下克上は果たされるのであろうか!?


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魔導忍者忍法帖 ゴブリン三等兵 @Saikyouseibutu-Goblin

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