第29話 魔導忍者はダンジョンマスターになる(4/4)

転移が終了すると、そこはそれほど大きくない部屋だった


壁の一面には無数のモニターらしき装置が設置されていて、ダンジョン内の様子が表示されているようだった


部屋の中央には、高さが1.5mほどの黒立方体の台座が設置されておりその上に白い球体が浮かんでいた


傍らには、1人の少女が立っていた、身長は160cmくらいだろうか、桃色ののショートヘアに、桃色の瞳、美しい顔立ちだが、表情に乏しくまるで人形の様だった、服装は何故かメイド服 汗




「はじめまして、賢者様 私はこの第56号ダンジョンのコア」


「正確にはあの球体がコア本体でこの身体は作業用ユニットです」


「俺が賢者だと知っているのか」


「はい、このダンジョンに入られてから、賢者様の反応を確認しております」


「この度は、過剰に増えてしまった魔物を討伐してくださりありがとうございます」


「あのままでは、いずれ増えすぎた魔物たちが街へあふれ出してしまう危険性もありました」




「何か問題が起こっているのか?」


「はい、機能のいくつかに不具合が生じています」


「簡易的な自己修復機能は備わっているのですが、大きな不具合には対応できないのです」


『イブ ダンジョンコアの修復は可能か?』


『私の機能では無理ですが、賢者の塔ならば可能かと』


「賢者の塔の機能を使えば修復が出来るようだ」


「良かったら頼んでみるが」


「是非お願いします!」


コアの反応を見るに、自体は切迫しているようだ




賢者の塔のバベルに連絡を取る


『マスター コアに手を触れて頂けますが?』


バベルに言われるがまま、雷蔵はコアに手を触れる


『第56号コアとのリンクを確認』


『コアのメンテナンスモードを起動します』


『347の不具合を確認』


『修復モードに移行します』


『修復完了』




「ありがとうございます」


メイド服姿の少女いやダンジョンコアが深々と頭を下げる


「今後、私は賢者の塔の管理下の塔に置かれることになりました」


「よって賢者様が当ダンジョンのマスター権限を持たれることとなります」


「なんだと!?」


雷蔵、ダンジョン初攻略達成と同時にダンジョンマスターに就任することになった




ダンジョンマスター就任を告げられると同時に頭の中にダンジョンコアやダンジョンに関する知識が流れ込んでくる


「ボス部屋にいた魔物たちは召喚したものかそれとも、生成されたものか?」


雷蔵が得たダンジョンの知識によると、ダンジョン内の魔物は、周囲から召喚されたものと、ダンジョン・コアがリソースを使って生成したものの2種類が存在しているらしい


ちなみにリソースとは、ダンジョン周辺から取り込んだ魔力や、ダンジョン内で吸収した様々な物質


つまり魔物や冒険者の死体、荷物のことである


ダンジョン内に一定時間放置された物は例外を除き、全てが吸収されダンジョンの運用に利用されるシステムらしい




「今回配置された魔物は、私が動作不良を起こしてしまい生成してしまったモノ達です、生成過程にも不具合があったらしく、本来の設定値より強力な魔物が生成されてしまいました」


「なるほどな」


「俺は、魔物のコアにある存在力を必要としているんだが、それを提供してもらう事は可能か?」


「存在力とは?」


『バベル 存在力の情報を第56号コアに送ってくれないか?』


『かしこまりました マスター』


賢者の塔とコアをつないでいるリンク経由で存在力についての情報を送ってもらう




「ダンジョンが取り込んだリソースから、存在力を抽出して提供が可能だと思われます」


「また、ダンジョン内にいる冒険者から存在力が流れ出ているものを採取することも可能なようです」


「冒険者も存在力を持っているのか?」


「はい 提供していただいた情報をもとに確認したところ 高ランクの冒険者ほど高濃度の存在力を保有しているようです」


「という事は、ダンジョンに人がある集まるほど、沢山の存在力が手に入るのかことになる?」


「そう言うことになります」


「なるほど ならばこういったことは可能か?」


雷蔵は、存在力の入手方法について何か閃いたようだ


「今まで試みたことがない為、断言はできませんが 理論上は可能です」


「まぁ、実現にはいろいろと準備が必要になる」


「準備が整ったら協力を頼む」


「かしこまりました」




閃いた入手方法について第56号ダンジョンコアと相談を重ねてマスタールームを後にする


「マスタールームは亜空間内に存在しているので、ダンジョン内とは時間の流れが違います」


「ダンジョン内に戻ってもほとんど時間は経っていないでしょう」


「それではまたお会いできる日を楽しみにしております」


最後に第56号コアは、にこりと笑顔を浮かべた




「坊や、何があったんだい突全魔法陣が光って消えたと思ったら直ぐに戻ってきたけど」


「ああ、ちょっとダンジョンマスターになってきた」


「「「「えええ!?」」」」


ちょっと散歩に行ってきた間隔でダンジョンマスターになった雷蔵であった




宝箱から、攻略証明になるメダルと宝石の入った袋を全て取り出すと、出口への魔法陣が現れる仕組みになっており


一行は魔法陣を使い出口へと戻った




ダンジョンを出ると、町には夕日が差し込んでいた


攻略の報告とクリスのパーティーへの登録申請をする為に、冒険者ギルドへと向かう


攻略証明のメダルを渡すと冒険者カードに攻略したダンジョンの情報を記録してもらえるのだ


攻略難易度が低いダンジョンとは言え、何度も挑戦を重ねようやく攻略できるもの


それをたった一日で攻略したと言う話は、今まで聞いたことがないとイェニーナが驚いていた


それとは別件で、ギルドマスターに用件があると伝える




イェニーナに案内してもらいギルドマスターの執務室へと向かう


「おう、ライゾー! よく来たな! それで、用件ってのはなんだ?」


雷蔵は、ギルドマスターであるライマールにある提案をした


「お前がダンジョンのマスターになっただと!?」


「それで、お前が話したことは本当に可能なのか?」


「ああ、ダンジョンコアに確認を取ったから可能だ」


「そうか・・・これは俺1人の権限でどうにかできる内容じゃねぇぞ」


「領主であるアルフーゴ・フォン・レスラトガ様に相談するから時間をくれ」


「それほど、焦ってはいない」


「しばらくはこの街でクエストをこなそうと思っている」




ギルドマスターへの相談も終わり、冒険者ギルドを出る前に、イェニーナに話しかける


「イェニーナ 急なんだが明日時間は作れるか?」


「明日も業務がありますのでその後でしたら・・・」


「遅くなったが、夕食でもどうかと思ってな」


「え!? 本当に連れて行って頂けるんですか?」


「ああ 世話になっている礼をしたいと、前から思っていたからな」


何故か、顔が赤いイェニーナと約束を取り付けギルドを出る


酒場からの冒険者特に男からの強い視線が突き刺さってきた


今回は更に、パーティーメンバーからも同じような視線を感じた


だが、何時もの如く、軽く受け流す




こうして、雷蔵の初ダンジョン攻略は、予期せぬダンジョンマスター就任という事件もあったが、無事に完了したのだった



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