第17話 魔導忍者はゴブリンの集落を壊滅させる(前編)

「さぁて、腹ごなしに勝負の仕切り直しといくかい?」


「望むところだ!」


「坊やあんたはどうするんだい?」


「依頼をこなしてくる」


「食費を稼ぐためにな!」


思いっきり皮肉を込めて言ったつもりだが・・・


「そうかい、頑張ってきな!」


「ライゾー我は、汝の為に勝つ!」


エネルギー充填100%!気合たっぷりとばかりに、鉄壁のイデアと白い野獣:白玲は、第二ラウンドへ突入すべく、冒険者ギルドの地下訓練場へと戻っていった


皮肉は通用しなかったらしい


哀れ雷蔵




何時ものように門番とサムズアップを交わし、超特急(音速!)で魔境の森へと向かう


『イブ 迅雷を使う 速攻で終わらせるぞ』


雷蔵は本気だ


何故なら、食費がかさんでこのままでは破産してしまうからだ




『ライジン・装着』


黒い人影が、亜空間より姿を現し、雷蔵を包み込む


『魔導外骨格:ライジン起動』


『システム・オールグリーン』


『上から探す、念のため隠形の術を頼む』


『ステルスモード起動』


『光学迷彩・音響・温度・気配・魔力感知 各阻害術式 正常に起動いたしました』


『飛翔の術発動』


『各スラスター展開』


『重力制御術式発動』


『風魔法:烈風 術式発動』


魔導外骨格:ジンライが、光学迷彩で姿を消す


雷蔵は重力制御で、軽くなった身体をが少し屈めて、飛び上がる


その瞬間、積層装甲の隙間から風魔法の風が猛烈に噴き出す


雷蔵は、隠形の術、飛翔の術と言っているがどちらも魔導外骨格の機能である


制御はイブさん任せ


もちろん手動での飛行も可能だ


だが、初飛行で初墜落は、御免被りたいので、イブさんに丸投げしている




あっという間に、上空1kmで停止し索敵を開始する


『俺も城の天守閣から滑空したことはあるが、この高さは初めてだ』


『良い眺めだな』


あまりの景色の雄大さにちょっと目的を見失いそうになる雷蔵


『イブ 魔物が密集している反応はあるか?』


『南西5キロの方角に100体近い魔物が密集している反応があります』


『500m離れた場所まで飛んでくれるか? そこからは、地上から近づく』


『了解いたしました』


数秒もかからぬうちに、着陸ポイントまで到達、音もなく着地を決める


お見事イブさん




『さて、ここからは俺の出番だな』


索敵から接敵をイブさんに丸投げしてきた雷蔵


ここからは魔導忍者の実力が発揮される


周りを周回しているゴブリンの背後に音もなく忍び寄り首を一閃


血しぶきが飛び出す間も与えず


『収納』


ゴブリンは亜空間へと姿を消す


それを何度か繰り返し、危なげなく集落と思われる開けた場所にたどり着く




大したつくりではないがしっかりと柵で囲われており、その上


(鳴子か)


鳴子とは、侵入者を防ぐための罠の一種で


細い紐に、一定間隔で木ぎれを2枚ずつ結び付け、侵入者がその紐にかかると、木切れが打ち合い音が出てる


こちらも、ちゃちな作りだが、ゴブリンが仕掛けたと考えると話は変わってくる




『知能が高い上位種がいるな』


『はい、10体ほどですが、魔力の高い反応があります』


『だとしっても やることは変わらないがな』


気付かれず近づき、死神の如く命を刈り取る


相手は自分が死んだことさえ気づかない


それが、忍びの暗殺術


だが、雷蔵は本来殺生を好まない


例え魔物でも、殺すのは自分の勝手な事情だと考える


故に、せめて苦しまぬようにとの彼の慈悲の現れでもあった




柵を音もなく飛び越え、集落へと侵入する


掘っ立て小屋と言うのも怪しいような作りではあるが、いくつか建物も存在する


前方に5体こちらへと歩いてくる


その間を縫うように走る


すれ違う間にすべて首を切り裂き絶命と同時に、5体のゴブリンが姿を消す


(あれ?収納ってあんな一瞬で使えましたっけ?)


1体目を考えもなく徐に亜空間から取り出し、血しぶきを全身に浴びた26代目がつぶやく


2体目からは大きな容器を用意し、そこに取り出しながら


「血も有効に活用しないと」


と何やら怪しげなことをつぶやいておりました




「バベル ちょっと雷蔵にどうやってるか聞いてみてくれますか?」


「かしこまりました」


「・・・術でちょっといじっているのだそうです、魔気合一させて、合力を使って、ゴブリンの死体を素早く穴に放り込む感じなんだそうです」


「うん 意味が分かりません!」


雷蔵は、感覚派忍者だった




ちなみに、魔気合一とは、魔力と気を合わせて練り上げることを雷蔵が作った造語


そうして練り上がった力を魔気合力、略して合力と呼ぶことにしたようです


合力で発動させた、強力な忍術を総じて、魔導忍法と呼ぶ




そうしてまずは屋外のゴブリンを始末して収納してを何度か繰り返したころ、前方に異様な光景を目にする事になる



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