第24話 魔導忍者は聖女を救う(中編)

レスラトガの冒険者たちは気のいい連中が多い


でも、中にはそうでない人間もいる


この者たちがそうだ


場所は、試練の洞窟 14階層


攻略まで残り1階層までやってきた


しかしそこは、彼らが想定ていなかったものが待ち構えていた




「ミノタウロス・バーサーカー!?」


「上位個体がいるなんて聞いてないぞ!」


「少なくとも、Bランクだ俺たちじゃあ勝ってこねぇ」


「くそ!あと一階層で攻略報酬が出るってのに」


「クリス!防御結界張れるか?」


「はぃ、張れますけどぉ?」


「少しばかり、防御結界で時間を稼いでくれないか?」


「その間に俺たちは、他の冒険者に加勢を頼んでくる!」


「わかりましたぁ」


「頼んだぞ」


防御結界で懸命に足止めを測る女の後姿を見て、にやりと笑いながらそうリーダーらしき男がそう言った


「おい!お前らも手分けして他の冒険者を探しに行け」


「そうだな!頼んだぞクリス!」


「はぁい!」




「馬鹿な女だぜ!」


「全くだ、いい女だから後で、楽しませてもらおうと思ってたのに残念だがなぁ」


「ああ、なかなかいい身体してたからな ひひひ」


「それより早くずらかろうぜ!」


女は、元々何かあった時には、切り捨てるつもりだったようだ


他の冒険者を探す気など、元々微塵もなく


男たちは、10階層まで撤退を始めた




青い髪に深く碧い瞳 神官の法衣を纏っている クリスは、リトニッド教の神官だった


孤児だった彼女は、レスラトガの教会が運営する孤児院でそだった


リトニッド教は、信者からお布施を無理に要求しない、治療や、浄化に関しても、金銭を要求することがなかった


だから孤児院での生活は質素で、とても余裕があるものとは言えなかったが、面倒を見てくれた女性神官は、本当の母親のように子供たちに愛情を注いでくれた


だから、クリスは幸せだった


成人すると、神官の見習いを始めた


物覚えが良い方ではなかったが、一生懸命修行に努めた


彼女には魔法の素養があり、修行の甲斐あってかなり高度な回復魔法が使えるようになった


なんとか神官になると、世話になった孤児院に恩返しがしたいと、冒険者になったのだが、それが間違いだった


冒険者になるには彼女は、純粋過ぎた、優しすぎたのだ




なぜか組むパーティーメンバーに恵まれず、報酬を誤魔化されたり、女だからと不当な扱いを受けてきた


それでも、今までは命まで脅かされるようなことはなかった


しかし今回は、Bランクの魔物の足止めに、1人置き去りにされると言う最悪の展開


彼女が生き残ることは、絶望的に思われた


このパーティーが、このダンジョンを攻略中でなければ




雷蔵たちのパーティー『黒き塔』はすでに13階層まで来ていた


イブ・ナビゲーションのお陰で、最短コース一直線


敵を見つけるなり我が先とばかりに、イデアと白玲が倒してしまい、とんとん拍子にここまで来てしまった


「おいそこの二人、今日は、俺のダンジョン初挑戦だし、ジスレアのリハビリも兼ねているといっはずだ」


「それなのに、俺たちの出番がほとんど無いんだが、どういうわけだ?」


「坊やが、食った分働けって言ったんじゃなかったっけ?」


「我は、この女には負けられないのであるからして!」


「取りあえず、今からお前らは後方の警戒をやってもらう」


「嫌なら、首トンで放置だ」


「「後方警戒了解っ!」」


ようやく、ジスレアのリハビリが始められそうだ




「ちょうどいいところにリザードマンが2体来たから、1体目を俺が倒すからみておけ」


「奴らは固い表皮な上に、体力もある」


「適当に魔法を打っても効率が悪い」


そう言って、蒼い炎を出現させる


蒼炎球の術のような球体ではなくではなく、細い棒のような形状で、猛スピードでドリルのように回転している


名付けて、『魔導忍法:蒼炎錐(ソウエンスイ)の術』


「こいつは、炎を圧縮して、錐のように回転させることによって貫通力を上げてある」


「そして、こう言った柔らかい部分を狙うわけだ」


そう言うと、蒼い炎の錐は、名にもとまらぬスピードで、リザードマンの目から後頭部へと貫通し、即死させる




「なるほど!分かりました!」


ジスレアは、見よう見まねで、火の精霊にイメージを送り、雷蔵が作り出した炎の錐を作り出す


きちんと炎が圧縮され高速回転している


違うのは炎の色が蒼か紅かの違いだけだ


(一度見ただけで再現するとは大したものだ)


ちょっとショックな雷蔵だったが、ジスレアの才能に関心する


『炎の錐』


『しかも無詠唱か、ものにしたようだな』


雷蔵の協力で、精霊と心通わせてから、詠唱なしで精霊にイメージを伝えることが出来るようになったようだ


ジスレアが作り出した炎の錐は、見事リザードマンの目から後頭部へと貫通した




それから、他の属性の精霊魔法も試しながら14階層へ続く階段へとたどり着く


14階層からは、初めてミノタウロスが出現したが、やることは変わらない


サーチ&デストロイ


単体であれば、ジスレアに任せ、数体の場合は、雷蔵が間引きして、最後の1体を彼女に任せて進んでいく


しばらく進むと、イブ・レーダーからの報告があった


『マスター前方から4名冒険者らしき反応が接近してきます』


『その奥に、比較的大きな魔物の反応と、冒険者らしき1名の反応があります』




4人の冒険者たちが慌てて、こちらへ走ってくる


「どけお前ら!」


「この先には行かない方が身のためだぜ」


「馬鹿な女の道連れになりたくなけりゃな!」


「ひひひ」


冒険者たちのが話し終わらぬうちに雷蔵の姿が掻き消える


イデア、白玲、ジスレアも雷蔵が消えたのに気づき慌てて後を追う


「馬鹿な奴らだぜ」


「自分から地獄の入り口に入っていきやがった」


『『『下種が!』』』


3人とも、口に出しかけたが、こんな奴らと口を聴くのも汚らわしいとばかしに走り出した


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