第55話 ムッツリさん


「お~、カップルでいっぱいだ~」


「うるさい、そんなはしゃぐな」


 中に入ると、目立つのはアトラクションよりも尋常じゃない量のカップル。

 至る所で見せびらかすようにイチャコラしている。全員爆ぜてしまえ。


「いっそのこと、私達も対抗しちゃう?――――って作くん!?」


「早く乗り行くぞ~」


 俺が隣にいると思った椎名は、抱きつこうとするが俺がその場にとどまっていないため空振りをする。


「も~、女子を置いてくとかモラルに反してると思うけど」


 プクッと頬を膨らます椎名に、


「いつも人目も気にせず、抱きついたりコンプラに引っ掛かるようなことを言ってるお前よりはマシだ」


「それはさぁ~?作くんの為にやってることだよ~」


「もっとやり方があるだろ」


「あ、やっぱベッドで癒される方がよかった?」


「一言も言ってない」


「なら作くんは何をしたら嬉しいわけ?」


「………特になにも」


 ただ普通にしててほしい、なんでここでは言えない。

 多分、椎名がただ俺の隣に居て頭を撫でるとしたら、安心しきってしまうからな。

 それに、忘れ切れていない同時のことを思い出してしまう。


「ジェットコースターでパンチラでもしたら喜ぶかな」


 階段を登り、少し並んでいる列の最後尾に並ぶと考え込む。


「んなわけないだろ」


「えー、でも作くんムッツリなところあるじゃん?」


「どこが」


「私がわざと胸押し付けたりさ、ベッドに忍び込んだ時もカラオケで襲った時も、胸見てたよね?あと太ももと鼠径部」


「………見てない」


「バレてないと思ってるけど、バレバレ」


「……………見てないから」


「そうゆう所がムッツリなんだよ、作くん」


 逆にあれで見ない男子がどこにおるか。

 いるのなら、そいつは性欲が死んでいる。てか男じゃない。


「とりあえず、乗ってみれば分かることだよね」


「分からんから」


「じゃ、私から見せに行くよ」


「わざわざ見せにくんな」


「まぁ、それじゃラッキースケベにならないしね」


「納得するな」


 うんうんと首を振る椎名に、俺は呆れる。

 ラッキースケベをさせたいからいつもミニスカを履いてるのかこいつは。

 だとしたら策士だな。もっと有効にその頭を使って欲しいものだ。

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