第52話 デートしたいの?

「どうだったどうだった!?私の可愛いくも真面目だった仕事姿は!」


 5時間ほど経過し、撮影が終わった椎名は私服に戻ると、ウキウキで俺の方にやってくる。

 完全にオフになった椎名は、やはりいつもと変わらなかった。


「うんうん、やっぱ可愛かったよね~知ってる~」


「いや一言も言ってないけど」


「私は作くんの心が読めるんだよ~、心が一体化してるからね~」


「いってろ」


 いつも通りくっついてくる椎名を、いつもより少し抑えめに突き放す。

 これが俺の行動次第で本当に落ち着くのだろうか。いまいち想像がつかない。

 でも、せっかく阿部さんから聞けた情報だ。無駄には出来ない。


「椎名、お前この後暇か?」


 と、さりげなく聞いてみる。

 すると、ニマニマと口角を上げながら、


「なになに!?もしかして作くん私とデートしたいの?」


「デートじゃない。普通に暇か聞いてるだけだ」


「暇だよ?どうせこの後作くんとどっか行く予定だったし」


「なら都合がいい」


「ん?どうゆうこと?」


「これ」


 と、俺は先程貰ったチケットを椎名に見せる。


「偶然ゲットしたんだこれ」


「これって、観覧車のチケットだよね?」


「そうだが、なにか問題か?」


「いや、なんで持ってるのかなーって」


「偶然手に入れたって言っただろ。それにここから近いし使わないのはもったいないから行ってみようと思っただけだ。行かないなら捨てる」


 苦しい嘘を吐く。

 ここで赤裸々に語っても意味がない。それは観覧車の中での会話だ。


「行く行く!絶対行くから!何がなんでも行くから!」


 俺からチケットを奪い取ると、椎名はピョンピョンと飛び跳ねる。


「ここの最寄りから電車で1本で行けるし、今から行っても夕方には家に帰れる」


「これはデートだよね」


「デートではない。ただ観覧車に乗りいくだけだ」


「いや、どう考えてもデートだってば」


「あんまりしつこいとそれ破るぞ」


「ダメ!」


 こうゆう所だよなホント。人をイラつかせる天才だ。


「デートじゃなくとも、私はお泊りコースでもいいと思うんだよね~」


「あ?」


「だってここら辺夜景綺麗じゃん?ホテルの上階から眺めたらロマンティックだと思わない?そこでシャンメリーでも乾杯した後に、バスローブ姿でベットインとか最高のシチュエーションじゃない?」


 顎をさすりながら言う椎名だが、


「妄想はやめろ、ホントに破るそ」


 チケットを奪うと、手でちぎるフリをする俺。


「ちょ、冗談じゃ~ん。夜ご飯くらいでいいからさぁ~許してよ~」


 と、撫で声で腕にすり寄り謝って来る。


 夜ご飯も俺は行くとは一言も言ってないんだが、多分、それは観覧車次第だな。

 夕食だけではない。今後、俺達がどうなるかもそこに掛かっている。


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