第14話 ホラー映画だ

 刹那、ホームに到着する電車。

 俺は何食わぬ顔でその電車に乗り込む。


 これで一安心だ。学校までは心の余裕が出来る。

 フゥっとため息を吐き、ドア窓の外を見ると、


「うわぁぁ!!」


 窓に張り付き、俺の方をじっと見つめる椎名の姿があった。


「ねぇねぇどうゆうこと?私行かないでって言ったよねもしかして作くん私に嘘ついたのそうゆう人だったのねぇ作くん答えてよねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇ私作くんのこと信用してたんだよそれを裏切るのどうゆうこと答えてくれなきゃやだよ作くん私は作くんのためにお水買いに行ってあげたんだよ?それなのになんでこんなことするのどうしてまってくれないのねぇねぇねぇねぇねぇ」


 ドア越しから微かに聞こえる声。そしてコンコンと窓を叩きながらボソボソと口を動かす椎名。

 その目には生気が感じられなかった。


 ホラー映画でしか見た事ないぞこの絵面。

 ノンフィクションで作られた幽霊的ではない怖さのホラー。


 人間が一番怖いと言われる理由が分かる。

 電車乗ってる人ドン引きしてる。


 みんな窓にへばりつく椎名をおぞましい目で見て「あれヤバくね?」「警察通報する?」などと騒いでる。


 それはそうだ。俺だって当事者じゃなかったら失禁ものだぞこれ。いや、当事者の今でさえ足竦んでるし。


 俺はドアから一歩離れると、電車は発車した。

 少しづつ動く車両、それについていくように椎名はドアにへばりつく。


 スピードが上がると、ついていけなくなった椎名は何かを言いかけて追いかけるのをやめた。

 微かに見えた椎名の口の動き。それは、「逃がさないから」と完全に言っていた。


「ひいっ」


 背筋が凍った。

 今日、またこいつにあったら俺は確実に殺される。冗談抜きでだ。


 学校行くのやめよう。というか今日は家に帰るのやめよう。


 家に帰って部屋に閉じこもったとしても、「ねぇ、開けてよ」と部屋の前で椎名が出刃包丁でドアをトントンと叩くだろう。挙句の果てにはドアを破壊してでも中に入ってきそうだ。


 そして、布団にくるまる俺に馬乗りをし、「私は信じてたんだよ」と涙ながらに言われめった刺しにされる。


 これ、マジのホラー映画だ。


 いや、どっちかというとSchoolDaysのラストまんまだな。


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