第15話 映画館

 俺は伊藤誠の二の舞になるのはごめんだ。


 という事で、今日は姿を消そう。

 学校にも行かない、家にも帰らない。


 流石に無断欠席はダメなので、友人伝えで学校に休むよう言ってもらって、親には友達の家に泊まるとでも言っておこう。


 姿を消すとしてもどうしよう。行く場所がない。

 普段、俺が行く場所には行かないようにしないとな。椎名が俺を探しにくるかもしれない。


 てなわけで、学校駅前のゲーセン、ショッピングセンターには行けない。

 だとしたら数駅離れた映画館でも行くとするか。


 学校の最寄り駅から、4つ行くと映画館のある駅に着く。

 俺は友達に休むと連絡しながら映画館へと向かった。


「空いてるな」


 平日昼間の映画はガラガラであった。それはそうだ。こんな平日の真っ昼間から映画を見る人なんてそうそういない。


「さて、何を見ようかな」


 チケット売り場にて、俺はタッチパネルと睨めっこをしていた。

 普通だったら何時にどの映画を見てくるものだが、気まぐれに来てしまったので、何を見るか決めていない。

 あまり待ち時間のないやつにしよう。


「あ、これでいいか」


 俺が選んだのは、最近ネットをざわつかせたサスペンス映画。好き嫌いが相当激しく分かれるらしい。

 ちょうど気になってたし、時間もあと20分とピッタリだ。

 ど真ん中の席を選ぶと1000円を投入し、発券するとポップコーンを買いに行く。


「キャラメルポップコーンのLと―――――コーラMお願いします」


 映画と言ったらポップコーンとコーラ。これは鉄則だ。

 買い終わると、ちょうど映画10分前のアナウンスが掛かったので、指定されたシアターに移動する。


「やっぱ少ない」


 場内には俺含め人は6人。これは静かに映画を見られそうだな。

 席に座り、スマホをマナーモードにしたりしていると広告が流れ始め、場内は暗くなる。


 最後に盗撮禁止の面白い広告が終わると、映画本編が始まった。

 映画に集中してポップコーンをパクパクと食べていると、中盤に差し掛かったぐらいだろうか、横から何か人影が迫ってくる。


 ペコペコと頭を下げ、最終的に俺の隣に座る人。

 途中から来た人だろうか。てか映画を途中から来る人がいるか?


 ネット予約してて、何かしらの事情で遅れたのだろうか。

 でも、俺がチケットを買った時には隣は空いていたような……………


 そんな事考えているより、映画に集中しよう。

 せっかくいい所なのに、余計な事を考えて台無しにされては困るからな。


 お口直しにコーラを飲み、もう一度ポップコーンの入れ物に手を入れる。


(あ……………)


 だが、手に当たるのは入れ物の底だけ。無意識のうちにポップコーンを食べ終えていたらしい。


 なんか少し損した気分だ。でもさっきまで少し残っていたような気がするが…………


 いや、もういい。映画だけを楽しむとするか。

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