第16話 メンヘラ……怖い
「おもしろかったなー」
エンドロールが終わり、俺は小声でそう呟く。
ネットでは賛否両論あった映画だったが、個人的にはおもしろかった。
余韻に浸りながら、席を立つと、
「この映画面白かったね、作くん」
後ろから聞き覚えのある声がする。それも、つい数時間前。
その瞬間、俺にはこれ以上ない悪寒が走る。というか死を感じる。
俺は、恐る恐る後ろを振り向く。
「作くん、映画館行くなんて私聞いてなかったよー」
そこには、何故かジップロックにポップコーンを入れた椎名が居た。
「お前なんでここにいんだよ!?」
姿を確認すると、本能的に距離を取る。
ここで抱きつかれでもしたら殺される。
後ろに回り込まれて首を絞められるか、そのまま包丁で一突きだ。
確実に殺される…………逃げた挙句学校に行かずに映画いるとか…………無事でいわれるわけがない。
表面は笑顔の椎名だが、その裏から殺気が感じられる。
というかなんでこいつ俺の居場所が分かるんだ?スマホの位置情報は切ってあるんだが。
まだ隠しアプリがあるのかもしれない、とりあえず安全を確保しながら問いただすか。
「おい、一つ質問だ。どうやって俺の居場所が分かった」
「ん~?どうやってだと思う?」
前かがみになり俺を顔を伺う椎名。
「ダルい事するな、早く言え」
「なんでそんな怒ってるのよ~、作くんのせっかち~」
「黙れ早く言え」
キレ気味に問い詰めると、
「―――――私から逃げたのは作くんだよね」
と、こちらに走ってきて俺の手を掴んでくる。
「いや、あれは………………」
「私嘘は言ってないよね作くんが勝手に電車乗ったんじゃんわたし待っててって言ったのにそうだよね?しかもなんで学校に行かないで映画館来てるの?それって私から逃げる為?そうだよねだって電車の時点で逃げたの確定だし。どうなの?教えてよ作くんねぇねぇねぇどうして私から逃げるの私の事が嫌いなの?こんなに作くんに尽くしてるのに私じゃダメなのもっと可愛くておっぱいおっきくて私以上に尽くしてくれる子がよかったの?そうならわたしもっと頑張るよ可愛くなっておっぱいおっきくしてもっと尽くすよそれでも私じゃだめなのそれだったらもう逃げないで一緒にいてくれるよね」
止まることなく椎名の口から言葉の弾丸が放たれる。目は光がなく、言葉にも抑揚がない。
怖い怖いやめてくれ。
そんな目で見られたら、怖くてチビりそうだ。
メンヘラ………ガチ怖い
このまま俺が口答えをしたら殺されそうだ。
これ以上メンヘラを悪化させないのと怒らせないように言葉を選ばなければ。
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