第7話 親が溺愛していると
「じゃぁ質問を変える。どうやって家に入って来た」
鍵はちゃんと閉めているし、チェーンロックまでしている。
この状態で入ってこれるならテレポートか、壁をすり抜ける能力があるしか思えない。
「え?普通に作くんママが入れてくれたよ?」
「チッ…………あのババア」
いくら椎名が幼馴染とはいえ朝から家に上げて俺の部屋へと誘導するな。
俺達の関係性を知らないし、昔から仲のいい幼馴染だとしても、異性の思春期女子を、思春期男子の部屋に平然と入れるか?
「ホント、ママさんに感謝だね?朝から作くんに会えるのは」
「今すぐあのババアをシバきたいな」
「いいママじゃない。作くんのママ」
「お前を俺の部屋に入れる時点でいい母親ではない」
「もう~、作くんはツンデレなんだから~」
「あ~、朝からうっざ」
こんなに朝からストレスが溜まることはあるのだろうか。そうそうないぞ?起きてすぐにブチギレそうになることは。
寝起きに水をぶっかけられたりする以上にムカつく。
「あ、そいえば朝ごはん出来てるってママさん言ってたからリビング行って食べてきなよ」
布団の上で伸びをしながらあくびをする椎名。
これ、俺がリビングに行ったら完全に俺の布団で寝るよなこいつ。仕草が完全に寝るポーズだぞこれ。
でも、俺がずっとここにいて監視出来るわけでもないし。
朝ごはんを食べに行かなきゃいけないし、今日は学校だ。それは椎名も同じだけど。
「おい、俺は今から下にご飯を食べにいくけど、俺のベッドで寝るなよ。てか帰れ」
椎名を指を指しながら睨むと、俺は部屋を後にした。
階段を降り、一階のリビングに顔を出す。
「作おはよ~朝ごはん出来てるから食べてね~」
ソファーに座ると、キッチンにいる母親が俺に声を掛ける。
「朝ごはんの前に、俺になにか言う事は?」
目の前のテーブルに置かれているワンプレートの朝食の食パンを加えながら俺は言う。
「作の所に雪穂ちゃん来たでしょ?ほんと、2人は仲が良いわね」
「いや、仲良くないし、家に勝手に上げないでくれるかな」
「いいじゃない~、昔からの付き合いなんだし気にしないの」
「……………もういいわ」
母親は何を言っても無駄だ。なにせ椎名の事が大好きだからな。
前だって、俺が家に帰ったら平然と椎名が俺の家族と夕食を食べてたり、新潟にある祖母の家に家族で帰省した時も何故かついていた。
そんな奇行を受け入れるくらい、俺の母親は椎名のことを溺愛しているのだ。
それと同じく、椎名の母親も俺の事を溺愛している。
中学の頃は毎日俺の分までお弁当を作り、週末には何故か俺を連れてショッピングをする。
こうもお互いの親がお互いの子供を溺愛していると、家の中でもプライベートな空間は皆無という事だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます