第6話 朝の定番シチュエーション
「―――――っ―――――ぁ――」
「んっ………………んんっ……………?」
翌日の朝、俺は誰かが囁く声と、腹部への違和感で目が覚めた。
「―――――おはよぉ」
夢か現実か分からない寝起きのこの感じ。今にも2度寝をしそうになるが、
「朝だよ、作くん」
「ん!?」
耳に嫌ほどこびりついている声で俺の目は一気に覚めた。
「あ、やっと起きた」
声が聞こえてくる方に俺は首をゆっくりと移動させる。
すると、俺の布団の中には、トロンとした表情で俺を見つめる椎名の姿があった。
「は!お前何してるんだよ!」
俺はベッドから飛び起き、壁に貼り付き椎名から距離を取る。
「なんでそんなビックリしてるのよ~、作くんのビビり屋さん」
「ビビるだろ! アホか!」
「酷いんだから~作くんは。私が起こしに来てあげたんだから感謝してよね?」
ベッドに乙女座りをして、小首を傾げる椎名。
よく見ると、下は履いていなく、胸元までボタンを開けたワイシャツ一枚しか着ていなかった。
隙間からは、谷間とピンクのブラがチラりと見える。
そんな事関係ない。というかこいつで興奮なんかしない。
「お前、何しにここに来た」
あまり椎名を見ないように目を逸らしながら言うと、
「起こしに来たに決まってるじゃ~ん。作くんの寝ぼすけさん」
「そうゆう意味じゃない! なんで起こしに来るんだよ」
「幼馴染とか恋人同士の定番シチュエーションじゃない?朝、布団に起こしに来るのは」
顎に人差し指を当て、天井を見ながら頭に?を浮かべる。
朝、起こしに来るシチュエーションは、アニメや漫画に山ほどあるけど、人が違う。
理想は、おしとやかで胸も大きく、容姿端麗、頭脳明晰。運動だって出来る美少女。
これが幼馴染で、布団の中や、主人公の上に乗っかって「おはよう」と微笑みながら起こしてくれる。
まさに理想のシチュエーションだ。
だが、今はどうだ。
勝手に俺と付き合ってると妄想している勘違いメンヘラ女が、勝手に人の家に侵入して、知らぬ間に布団の中にいる。
完全に悪夢だろ。それかホラー映画のワンシーンでしかない。
とにかく、怖い事には変わりはない。
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