俺と付き合ってると勝手に妄想している勘違い美少女、幼馴染だから逃げられない。

もんすたー

第1話 プロローグ

「ねぇ~、もうそろそろ私達半年記念日じゃ~ん?」


 俺の腕に抱きつき、小さい胸を押し付け上目遣いでそう言う女。

 椎名雪穂(しいなゆきほ)。


 黒紙ボブの髪にはリボンの髪留めがついており、目はトロンと垂れている。すらりと伸びた鼻筋、薄いピンク色でプルっとした唇。

 そんでもって、低身長オシャレ。無性に守りたくなる見た目をしてる。


 椎名が半年記念日とか言っていたから、俺、和泉作(いずみさく)と付き合ってると思っているだろうが…………


 付き合ってない。

 それに、俺は椎名に恋愛感情など抱いていない。


 ただ、俺が一方的に好意を持たれているだけで、付き合ってるという事実など一切ない。

 なのに………………


「半年記念日はどこかレストラン行ってその後ホテルがいいと思うんだぁ~」


 何故か、こいつの脳内では俺と椎名は付き合ってるということになっている。

 別に、勝手に妄想してる分には俺にも周りにも害はないからいいのだが、こいつは周囲の人間にも俺と付き合ってるだのホラを吹き、LINEのステメでも「作の愛する彼女」と書いている。


 今だって、俺にくっついて半年記念日などと意味不明な事を言っている。

 こいつがめちゃくちゃブスならまだしも、可愛いのがまた問題である。

 ブスならいくら冷たく離したって良心は痛まないし、逆に清々しいまであるが、こいつはそうはいかない。


 学校でも一目を置く美少女で、みんなの間では(残念な美少女)と呼ばれている。

 残念な理由は、もちろん俺との妄想の事。逆に言えばそれ以外は完璧という事。

 周りからは「もう付き合っちゃえよ」「いっそ結婚しろよ」などと言われるが、見ているだけだとこの辛さは分からないだろう。


「くっつくな暑苦しい」


 俺はいつものように、椎名を体から引き剝がそうとすると、


「いつものことじゃない。それにほぼ毎日アツい夜を過ごしてるんだし」


 と、さらに密着して、さらにはワイシャツの隙間から胸をちらつかせる。

 これ。これが俺を困惑させる原因だ。


 ただ付き合ってるとかだったらまだしも、ヤッてるだの、妊娠しただの度が過ぎる事を言ってくる。それを行動に移しているのもヤバい。


 この前なんか赤ちゃんグッズを買ってきた。







 この勘違い女は、めんどくさいが………………可愛い。


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