第2話 勘違い女の実態
ワイワイと賑わうお昼休みの教室。
ある人は菓子パンを食べながら、友達と楽しそうに雑談をしている。またある人はみんなでゲームをしながらパクパクとお菓子を食べている。
そんな和気あいあいとした教室内だが、窓側の一番後ろの2席で、
「そろそろさ~、私達同棲とか考えてもいい時期なんじゃないかな?」
「はいはい~そうですね~」
今日も俺は、窓からの景色に黄昏れながら椎名雪穂(しいなゆきほ)の話を聞き流していた。
「場所は都内で、3LⅮK。一部屋がこども部屋で、もう一部屋は私たちのあ・い・の・す」
「そうだね~」
「もちろん家賃とかその他光熱費はすべて私が払うわね?だって作くんの為だもん!」
「そうしてくれ~」
「ベッドはキングサイズ!もちろんエッチがしやすいように」
「はいは~い」
みなは何故、彼女がこんなに夢のある話をしているのに、俺が全く興味を示さず聞き流しているか不思議で仕方ないと思う。
普通だったら、大好きな彼女との同棲なんて話が膨れ上がり盛り上がる事間違いなしだろう。
結論、そもそも俺と椎名は付き合っていない。恋人関係である事実は皆無だ。
よって、これは椎名のただ単の妄想なのである。
「作くんはなんかいい案ある?私たちの愛の巣に関して」
お弁当の卵焼きをパクリと食べながら俺に聞いてくる。
「はいはい~いい感じだね~」
いつものように聞き流していると、
「ちょっと~、ちゃんと聞いてよ」
俺の両頬を手のひらで抑えると、自分の方へ向かせ、プクッと頬を膨らませる。
「ちゃんと聞いてるから」
手を退けて目を逸らしながら言う俺に、
「私は作くんを思って話してるの!ちゃんと聞いてくれなきゃ困る!私たちの将来の為なんだから」
少し声を張る。
「……………分かった、ちゃんと聞くからはよ話せ」
このままキレられるのはごめんなので、話を聞く素振りを見せると、
「ほんと!?なら早速話の続きから」
ルンルンとご機嫌な様子でまた話を始めた。
ここで疑問に思うだろう。
なんでこんなめんどくさい勘違い女と一緒にいるのだろうかと。
俺だって、今すぐこんな奴とはおさらばしたいし、今後一切関わらないで欲しい。
だが、俺達の間には切っても切れない縁がある。
何を隠そう、俺と椎名は幼馴染。
椎名の家は、俺の家の向かい。親同士も毎月庭でBBQするほどの仲良し。
物心つく前から、俺と椎名はいつも一緒に遊んでいた。
つまり、詰みという事だ。
昔、小学生くらいまでは良かった。ただの仲が良い幼馴染というだけの関係で。
だが、俺達の関係性が変わったのは中学2年の夏だった…………あのことはもう思い出したくもない。
機会があったら話すとでもするか。
それに、同級生からも「もういっそ付き合えよ」「一生養ってもらったほうが得じゃね?」「可愛いくて、尽くしてくれるとか最高じゃん」などと言われる。
俺だって、学校生活を友人と過ごしたいのだが、椎名が俺の常に隣にいる事で居ずらいのだそうだ。
もちろん、友人と過ごすことだってある。だが、それが椎名のせいで極端に少ないというだけだ。
だから、こうして俺は半ば無理やりお昼ご飯を一緒に食べているというわけだ。
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