第50話 清楚系ビッチ?
「おッ待たせ~、どう?どう作くん!?このいつもよりさらに可愛いくなった私は!?」
しばらくして、衣装とメイクアップを終えた椎名はハイテンションで俺の元へ駆け寄って来た。
「別に、どうもしないが」
とは言ったもの、内心は正直驚いている。
いつも、黒系の服を着ている椎名だが、今日はその逆。白を基調したワンピースには所々に彼岸花が掛かれている。
そして、ポニーテール縛った頭には少し大き目な麦わら帽子。それに、靴底高めのエスパドリル。
可憐なお嬢様を思わせるようなコーディネートだった。
というか、さっきの阿部さんの話の影響で椎名を変な風に見てしまう。
いい事なのか、悪い事なのか……………
「作くんって、ホント女心分かってないよね~。私がこんな可愛い姿をしてるのにその反応ってさぁ~、ないわ~」
「お前がねーわ」
「いつもと雰囲気違うでしょ?私、清楚で可愛いと思わない?」
「発言が清楚もクソもないからな」
「違う!私が言ってんのは見た目の話!性格の話なんて一言も言ってないんですけど?」
「いや、清楚っていうのは見た目もそうだし、性格も含めたことを言うんだぞ」
「なら私は…………清楚系ビッチ?」
「自分で自分を汚すのかよ」
清楚系ビッチ。言葉は汚いが、今の椎名を表す最適な言葉だ。
ビッチと言うより隠れメンヘラの方が適当な気もするが、どちらも椎名なら似合うからどっちでも気にしない。
「椎名さん、お時間です」
「あ、今行きまーす」
遠くから名前を呼ばれると、
「じゃ、作くん行ってくるね~」
と、小走りで呼ばれた方へ向かう。
「あれが変わるんすか?」
俺は後ろ姿の椎名を見ながら、隣にいる阿部さんに苦笑いする。
衣装を着れば仕事モードになると思っていたが、そうではないらしい。
いつもとなんら変わりはない。
「今はね。でも、カメラが向けられるとその時だけは本当に別人になるよ」
「だけといいんですけどね」
雑誌で見たあの表情が、俺がいる中で本当に出せるのだろうか。
不安でしかない。
俺のせいで仕事に影響が出たら洒落にならないぞ?
「椎名雪穂入りま~す!」
最終準備が整った椎名は、カメラがセッティングされている前に現れる。
背景は、お城の一部のような白の階段、その上にはこれまた白で塗装された王宮にでもありそうな椅子とテーブル。
「まず、 流しで撮ってみようか」
監督らしき人がそう言うと、「は~い」と手を上げて変事をしてベンチに座る。
「始めるよー」
その声が聞こえると、一気に椎名の顔からはちゃけた表情が消える。
いつもの雰囲気とは180違い、仕事、というかその風景に溶け込むかのような役に入っていた。
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