第27話 2年前の夏

 *ちょっと重めです





 少し昔話をしよう。





「楽しいね!作!」


 2年前、中2の春から夏にかけて俺には彼女が居た。

 名前は瀧千束(たきちさと)。当時同じクラスで仲の良かった女子であった。


 艶のある黒髪セミロングには、前髪に桜のピンを付けている。それが彼女のトレードマークであった。


 愛想がよく、笑顔がキラキラな彼女は誰からも人気があった。


 そんな彼女にちょうど、千束とヘアピンと同じ桜が咲く4月。クラス替えで同じになった時に告白された。


 もちろん、俺は即答し、ここから俺と千束の恋人という関係が始まった。

 この時、椎名も俺以上に喜んで祝福をしてくれ、デート前などに、一緒にプランを練ってくれたり服を決めてくれたり色々と世話になった。


 中学生にしては順風満帆な生活をしていたと思う。

 だがしかし、そんな生活はずっと続かなかった。

 7月後半の夏休み真っ只中、俺と千束は夏祭りに行った。


 そしてその時にプリクラを撮り、「一生大事にしようね!」と駅で別れ際約束した矢先、その約束は俺だけが守れるものになった。

 別れた………………ある意味では別れたと言ってもいいかもしれない。


『千束ちゃん、事故に遭ったんだって。まだ状況は分かんないけど早く病院に向かいましょう』


 母親からの一本の電話で俺は言葉を失った。

 だが考えてる暇はなく、俺は無我夢中で走り家へ帰るとすぐさま病院に向かった。


 千束と俺の母親はPTAで一緒だったため、関わりがあったらしく仲が良かったらしい。付き合ったと言った時も、それはもう大喜びしていた。


 俺の母親と千束の母親に関わりがなかったら、その電話もなかった。今考えるとゾッとする。

 病院につき、医者から伝えられたのは、


「最善を尽くしましたが……………」


 と、一言。

 その場にいた全員が絶望した。


 夏祭りでプリクラを撮って一生大事にしようと約束した数時間後………………






 俺は彼女と死別した。






 これが、2年前の夏の出来事……………元カノとプリクラの苦い……苦い思い出だ。



 ちょうどその頃だ。椎名が俺に対しての距離がおかしくなったのは。

 どこに行くのも、何をするにも椎名は俺を気にかけ、心配してくれる。


 最初は、恋人を失った俺に同情してくれるのだと思ったが、次第にエスカレート。

 中3に入る頃にはほぼ今と同じ状況、俺と付き合ってると勝手に妄想していた。


 俺が椎名に心配かけ過ぎたから、こいつはおかしくなったのかもしれない。

 原因は、俺にあったのかもしれないな。







 今も財布の中に大切にしまってある。


 浴衣姿の千束と、甚平を着ている俺が笑顔でピースをしたり、お互いの頬をつねったり、初々しく顔を赤くしながらもバッグハグしている。







 そして、その2人の間に「一生大好きだよ」と中学生カップルっぽく、大きく書かれたプリクラが。

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