第26話 2人になれる場所行かない?

(荷物を置いてカメラの前に移動しましょう!)


 ポップな音楽と共に、プリクラのキラキラした音声が指示を出してくる。


「にしても久しぶりだなー」


 中を眺めながら、俺は指示に従い荷物を置く。


「久しぶりって、作くんプリクラ最後に撮ったのいつなの?」


 髪型を整えながら、椎名は横目で俺に聞く。


「………2年前の、夏だ」


 少し俯き、暗い声になる俺。


「2年前の夏……………ね」


 椎名もその事を聞くと、申し訳なさそうに声を細める。


「ご、ごめん作くん…………私……………」


「別にいいんだ、もう過ぎたことだし気にするな」


 無理やりに笑顔を作る俺だったが、


「でも!」


「プリクラ、楽しみにしてたんだろ?余計な事考えずに撮ろーぜ」


「……………千束ちゃんのこと、気にするなは嘘だよ。それは嘘…………」


「その名前を出すな」


「作くんにとって千束ちゃんは絶対に過ぎたことでもないし!これから気にしないことなんて絶対に出来ない!だって、作くんは―――――」


「だからその名前を口に出すな!…………千束の名前を出すな……………」


 怒鳴る俺の声は次第に小さくなり、どこからか涙が溢れてくる。


「作くん…………」


「いや、もういいんだ…………ごめん」


 目を擦りながら謝ると、


「謝るのは私の方だよ…………作くんに辛い思いさせちゃって」


「いいんだ、俺の方こそごめん」


「もうプリクラは取らなくていいよ、作くんに辛い思いさせてまで撮るものじゃない」


「…………俺から提案したのに、いいのかよ」


「私、作くんの気持ちに気付けなかったなんて……彼女失格だね」


「誰が彼女だよ」


 鼻をすすりながら、俺はクスッと笑う。

 プリクラが音楽を流しながら写真を撮る準備をする中、俺達は外へ出た。


「作くん、ちょっと話したいことあるから2人になれる場所行かない?」


 椎名は俺の顔を覗くと、優しい声で提案してくる。

 この様子だと、別に何かしようって訳ではなさそうだけど、一様。


「話したい内容を聞いてからなら別に構わない」


 聞いておかなきゃ安心できない。

 それに、このまま家に帰ってゲームした所で、思い出してしまいそうだ。だったら椎名にダル絡みでもされて気を紛らわしたほうがいいかもしれない。

 思い出すより幾分マシだ。


「ここで話せなから行こうって言ってるんじゃない」


 プクッと頬を膨らませる椎名。


「変な場所に行かない、それに変な事しないならついていくぞ」


「行かないし、しないからついて来て」


 と、俺の手を引く椎名。

 その手は、いつもよりぎゅっと強く握られているような気がした。

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