第25話 性格だけ

「プ~リクラ、プリクラ~。作くんとプリクラ~」


 鼻歌を歌いスキップをしながら前を歩く椎名。

 なんだこの否めないカップル感。


 傍から見たらわがまま可愛い彼女に振り回されてる彼氏にしか思われていないだろう。


 プリクラを撮るのが嫌だ以前に、周りの人にそう思われるが嫌だ。

 実際カップルじゃないし、こいつが勝手に妄想してるだけだし。


「…………性格だけなんだけどな~」


 椎名の後ろ姿を眺めながら、俺はそう呟く。

 誰もが認める美少女、ファッションモデルもしている。そして尽くしてくれる。

 あとは、あの性格と異常行動なくせば世界一の彼女になるだろうに。


「ん?どうしたの作くん」


 考えていると、椎名は後ろを振り向き小首を傾げる。

 この仕草だって、通りすがりの人から見たらただの美少女で終わるんだろうな。


「なんでもねーよ」


 と、鼻を鳴らすと椎名を追い越しプリクラコーナーへと向かう。


「何~作くんも乗り気なんじゃ~ん」


 目を細めて笑うと、椎名もルンルンと付いてくる。


「………最近のプリクラってこんな多いのか」


 プリクラコーナーに着くと、俺はゴクリと唾を飲む。

 当たり一面に広がるプリクラ機。ざっと見ただけで10台以上ある。


「作くんはどのプリで撮りたい?」


 俺の肩を叩く椎名。


「どれって、機種によって何が変わるんだ?」


 ここ2年くらいプリクラなんてまともに撮ってない。

 最後に撮ったのは元カノ…………いや、この話はやめておこう。

 苦い思い出だ……………思い出したくもない。


「そりゃ―変わるよ」


「具体的にどこが」


「盛れ度!」


「あー、目がおっきくなったり小顔効果とか美肌効果ね」


「そう!女の子は盛れなきゃプリクラを撮る意味なんてないんだよ!」


「なら撮んなくても」


「ダメ!今日は盛れても盛れなくても撮るの!これは決定事項!」


 ビシっと人差し指を立てる。


 まぁ正直どれを選んでも大して変わりはないと思い、


「これでいいよ」


 と、適当に指を指した。


「おぉー!中々センスいいね作くん」


 椎名は俺の手を引き、早速俺が指したプリクラ機の前へと移動する。


「なんだ、これは当たり機なのか?」


「そうだよ!最近JKの間で話題なの!超盛れるとかどうとか、友達も絶賛してたんだ~」


「へぇーそれはそれは」


 そういえば、JKだったな椎名。中身は人生2度目みたいだけど。

 正直盛れとかどうでもいい。些細な部分とか見ても分からないしな。


「じゃ、撮ろう!作くん」


 財布から400円とを取り出し、機械に入れると俺の手を引き中へと連れ込んだ。

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