第42話 経験上から感じる予感

「は?」


「聞こえなかった?撮影のつきそ――――」


「そうじゃねー。なんで付き添わなきゃいけないんだ」


 意味が分からない。

 わざわざこいつの雑誌の撮影に付いて行ってなんの意味があるんだ。

 仕事している間荷物でも見ていろと?


「私は、作くんに私が仕事をしている姿を見てて欲しいの!」


「は?」


 俺はさらにアホな声が出る。

 さらに意味が分からない。


「お前の仕事姿を見て、俺は何を思えと?」


「可愛いとかすごいとか思ってほしい、かな?」


「ぜって―行かない」


「ていうのは冗談で、真剣な話。私の真面目な姿を見て欲しい」


「なんで」


「私さ、いつも作くんに対して距離感近いしめんどくさウザイやつって思われてるかもしれないでしょ?」


「しれないじゃない、思ってるから」


「だからさ、私のちゃんとした姿を見てもらったらその考えが変わるかもしれないじゃない?」


「変わらない…………な」


 と、俺は一瞬言葉が詰まる。

 一番最初、椎名が写っている雑誌、インタビュー以外の場所を見た時、確かに俺の心は少し揺らいだ。


 いつもクソみたいな行動をしているやつが、180度違った表情をして10代の誰しもが手に取る雑誌に載っている。


 普通の幼馴染なら、喜んで見に行くし尊敬するに値するだろうけど、椎名だと気分が乗らない。

 でもまぁ、見るくらいならいい経験になるし、


「ついていくくらいだったら、別に構わない」


 その言葉を聞くと、


「ホント!?やっぱ作くん自慢の彼氏だよ!」


 椎名パァっとした笑顔を浮かべ、抱きついてくる。


「そうゆうのはやめろ!ウザったいな!」


「嬉しい感情は表に出さなきゃ伝わらないんだよ~!」


「伝えなくて内に秘めとけ」


「来てくれるならいいとしますか」


「そのまま一生くっつくなよ」


 雑誌の撮影について行くことになったが、なんか嫌な予感がする。

 本能が感じる。てか経験上嫌なことが起きる気がしてたまらない。

 椎名単体で何かしてくるとなると、対処できなくはないが周りを巻き込んできそうで怖い。


「今日は大人しく帰るよ」


 家の前に着くと、門を開け、後ろを振り向く椎名。


「さっさと家の中に入れ」


 俺もすぐさま玄関のドアを開ける。


「じゃ、また学校で!てか明日の朝ね!」


「誰が一緒に登校するかアホ」


「作くんが先に行っても追いつくから大丈夫だよ~」


「……………チっ」


 笑顔で手を振る椎名を睨に、舌打ちをすると家の扉を強く締め、鍵をかけ、チェーンロックまでかけ、親に絶対に椎名を家の中に入れるなと言っておいた。


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