第10話 嫌な視線

 よし、これで安心して学校に行ける。

 フゥっとため息を吐きトイレから顔を出す。


 ゆっくりと部屋に戻り、鏡の前で身だしなみを整える。

 曲がっているネクタイを直し、髪をワックスでセットする。


 それから下に行き、冷蔵庫から小さめの紙パックのコーヒー牛乳を取ると、俺は家を出る。


 天気は快晴。椎名の気配はない。

 寝起きは最悪だったが、今は最高の朝だ。


 コーヒー牛乳を飲みながら暖かい太陽の日差しを浴び、駅までの一本道をルンルンで歩いていると、


「―――ん?」


 どこからか視線を感じた。それも、嫌な視線。

 背筋がゾクゾクして、本能的に危機感じる。

 だが、急いで辺りを見渡しても誰もいない。


 椎名がどこかに潜んでいるかと思ったがそれはないだろう。

 あいつのことだ。俺が学校に向かったと思ってもう電車に乗ったに違いない。


 もし、俺の後ろをついて来ていたり、駅で待ち伏せしていたら俺は警察に通報する。

 ここまでくるとたちの悪いストーカーだ。


 もう一度、よく周りを見るが椎名の姿は見当たらない。

 ただの勘違い。そう思い、再度駅へと足を進める。


 数分歩くと、最寄りの駅へ到着する。

 この駅から学校までは4駅。15分程だ。

 改札を通り、ホームに降りると時刻表を確認する。


「あと5分か」


 次の電車がくるまで5分。俺は近くにあるベンチに腰を掛ける。

 朝からどっと疲れた……………すべては椎名のせいなんだが。

 なんで学校がある日の朝からこんなにぐったりしなきゃいけないんだ。授業に集中できないだろ。


 まぁ、たいていの授業は寝てるかスマホを見てるかしかしてないが。

 疲れた俺は、前かがみにうなだれていると、


「これ飲んで元気出して」


 と、目の前に栄養ドリンクが差し出された。


「え、あ。どうも」


 会釈しながらそれを受け取り、顔を上げると、


「作くんはお疲れ気味なんだね。もっと睡眠取らないと」


 微笑みながら俺の顔を覗く椎名の姿があった。

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