第9話 可愛い事には変わりない


 さてどうしよう。

 本当に詰んでいる。何かいい方法でもないものか。


 頭を抱える俺はポケットに手を入れると閃いた。

 椎名に電話かけて下に呼び出し、その間に俺は学校に行く支度をしてすぐさま家を出る。

 スマホがポケットに入っててよかった。


 ゆっくりしていられない。

 椎名が1人シているのを見たいのは山々だが、俺は目を離し、息子がギンギンのまますぐさまトイレに駆け込む。


 これは決してシコるわけではない。椎名に電話を掛けるためだ。


 いくら椎名が勘違いメンヘラ女だとしても、可愛いことには変わりない。だから体も反応する。

 ただクソ残念な美少女というだけだ。これがもし性格が完璧なら、俺はこいつと結婚してるまである。


 って、今はそんな事言ってる場合ではない。早くあいつに電話を掛けないと。

 スマホを開き、LINEをブロックしていた椎名を解除すると、電話を掛ける。


 夢中になって出ないとかやめてくれよ。この作戦の意味がなくなる。

 コール音が3回繰り返されると、


『もしもし?―――ハァハァ――どうしたの作くん』


 息を切らしている椎名は電話に出た。


『…………なんで息切れしてるんだ?』


 疑われないようしらを切る俺。


『あ、えっと~……………ちょっと運動をね』


『運動か…………』


 ある意味、オナニーは運動かもしれないな。


『それで?なんで電話掛けてきたの?下に居るんでしょ』


『そうなんだけど、俺の親が呼んでるから電話掛けたんだ』


『呼びに来ればいいじゃない』


『今ご飯食べてるし、お前の分もあるからさ。それで電話掛けた』


『私の分もあるの!?それって、作くんと一緒に朝ごはん食べれるって事!?』


『早くこっちに来たらな。俺もうすぐ食べ終わるし』


『すぐ行く!』


 椎名はそう言い電話を切ると、バタンとドアが勢いよく開きドタドタと階段を降りる音がした。


「よし、行ったか」


 そっとドアを開け、椎名がいないことを確認すると、俺は自室に移動し制服とバッグを持ってまたトイレへと駆け戻る。

 部屋で着替えていると、いつ椎名が戻って来るか分からない。

 その証拠に、


「作くんどこ行ったぁぁ!!!」


 階段を駆け上がり、俺の部屋に戻って来る椎名。

 間一髪だった。あと少し遅れていたら確実に捕まっていた。

 息を殺して椎名が居なくなるのを待とう。


「制服がない!バッグもない!いつの間に家を出たの作くん、すぐに追いかけないと!」


 静かに着替えていると、そう言いがらまた階段を駆け下りる椎名。

 刹那、玄関のドアが開く音が聞こえた。

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