第46話 付き合ってませんから!


「もう結構関係者らしき人いるじゃんか」


 公園の真ん中にある管理所には、遠目からでもカメラなどの機材を持ったスタッフらしき人物が集まっていた。


「スタッフが演者より先に集まるなんて当たり前じゃない?プロだし」


「お前にはプロ意識はないのかよ」


「あるけどさ、早めに行ってもあっちの準備が整うまですることないし、逆に迷惑なんだよね~。設置とか確認とか色々あるらしくてバタバタしてるから」


「………そうですか」


 案外ちゃんとしている。

 もっとふわっとしてるかと思ったらちゃんと行動して考えているじゃないか。


「でも、もうすぐ行かないと。私の準備もあるし。あと挨拶」


「さっきまで来ない気満々だっただろお前」


「現場見るとスイッチ入るタイプなんだよねー私」


「前日くらいから入れろよ」


「まー結果オーライだからいいじゃん」


 と、笑顔を見せてくるが、俺の額には血管が浮き出るだけだ。

 糖分でそのイラつきを収めて歩いていると、


「やっほー阿部っち!」


 近くまで行くと、とある人物に向かって手を振る椎名。


「おー、来たか雪穂~」


 ハスキーな声で手を振り返す、スーツが良く似合う女性。

 手には缶コーヒーとアイパッド。まさに仕事が出来る女という佇まいをしている。


「今日は遅めの入りじゃないか」


「えへへ、今日は作くんを連れてきたからね」


「へー、これが例の」


 全身を眺めてくる女性。


「初めまして、和泉作と申します。本日は椎名の付き添いで来ました」


 とりあえず挨拶をしておく。初対面の人と会う時の基本だ。


「これはご丁寧にどうも。私は雪穂のマネージャーをしています、阿部桜(あべさくら)と居ます。これからよろしく」


 名刺を出しながら、大人の余裕をかもしながら挨拶をしてくる。

 これが椎名のマネージャーか。真面目そうで何よりだ。


「雪穂から君のことはよく聞いてるよ」


「差し支えなければどんな内容話してるか聞いてもいいですかね」


 冷や汗を流しながら聞くと、


「イチャイチャしただとか、夜はどうだとか、すごくいい彼氏だってね」


 クスクスと笑いながら言う阿部さん。


「……………しいな?」


 だが、俺の血走った眼は椎名の方に向いていた。


「てめ~!何言ってんだよ!マネージャーまで嘘ついてんじゃねー!」


 椎名の頬をつねり横に引っ張る。


「ほんろのことらからいいら~ん」


「何もホントの事じゃねーから!」


「はずかしがらないでちゃらんとしょうかいらせてよ~」


「嘘を紹介してどうすんだ!」


 言い争いをしている俺達に、


「いいカップルだね」


 微笑ましい表情で見てくるが、


「付き合ってませんから!」


 過去一真面目な顔をしてそう言った。

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