第45話 太ると思ってるの?
「甘い~美味しい~!やっぱ最高過ぎるよ~!」
「見てるだけで胃もたれしそうだわ」
あれから十分後、撮影がある公園の端っこにあるベンチで先程買ったものを食べたり飲んだりしていた。
「作くん、女子は甘いものに貪欲でいいんだよ~。それに一生のうちに限られてる食事は毎食美味しく楽しく幸せじゃなきゃ意味ないんだからね?」
「自分の考えを勝手に押し付けるなよ」
「彼氏とは気持ちを共有したいんだよ~」
「……………黙って食べてろ」
原型もとどめてないフラペチーノを片手にドーナツを食べる椎名に、俺はため息を吐く。
「それによ、これから撮影なのにそんな食べて大丈夫なのかよ」
「なんで?」
あざとくクリームを口に付けながら小首を傾げる。
可愛い顔をしているが、手に持ってるものが衝撃すぎて薄れている。
「撮影だから衣装とかあるだろ、あと普通に体調とか」
「衣装ね~、まぁ大丈夫でしょ」
「キツキツだったらどうするんだよ」
「走る!」
「この短時間で痩せられると思ってんのかお前は」
「逆この短時間で太ると思う?」
「お腹は多少出るだろ」
あれだ。よく食べ放題に行ったあとお腹周りがきつくなる現象。
撮影の衣装となると、ピッタリなサイズを用意されてるだろうし、朝からこんなに食べて飲んだらヤバいんじゃないか?
「大丈夫だよ、もしもの時はマネージャーになんとかしてもらうから!」
「お前マネージャーをなんだと思ってるんだよ」
「ドラえもん?」
「頭湧いてるだろ」
糖分の取り過ぎで思考回路鈍ってるんじゃないか?
口にクリームが付いてるのも顔の筋肉が動いてないからかもな。こんなんでちゃんと表情を作れるのだろうか。
「とりあえず、食べたら集合場所行って確認しよ」
「最初から行けばいいじゃんか。それをわざわざ離れた場所で」
「だってさぁ~、まだ作くんと2人で居たいんだよ~」
「はぁ……………しんど」
来なきゃよかった。もう疲れてる。あと半日体が持つか今から心配だ。
「メイクとか時間かかるから本当はもう行った方がいいんだけどね~」
「なら早く行けよ」
「行ったじゃ~ん、私は仕事より作くんと一緒に居たいの!」
「お前、仕事してるところを俺に見せたいから連れてきたんじゃなかったのか?」
「そうだけどさ~、隣でこうしてるとどうでも良くなってきた」
「よし、行くぞ~」
椎名の言葉を聞き流し、俺はベンチから立ち上がり集合場所へと歩き出す。
「ちょっと~……………ふぁ、ふぁっふぇ~~」
と、慌ててドーナツを口に頬張り、俺の後ろを椎名は追いかける。
このままここに居たら本当に撮影に行かないそうだ。そのままホテルにまで連れ込まれそう。
これまでの経験から想定するに、こうゆう時は行動したもん勝ちだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます