第54話 勘がいい
「映画面白かったね~」
「よりによってこの時間に恋愛映画しかやってなかったとは」
「すごい感情移入しちゃったよー」
「どこにだよ、現実味がなかっただろ」
「いや~、主人公とヒロインが私達だったらを考えると…………」
「はぁ………………」
電車と徒歩で約1時間半、そしてそこから移動やら映画を含めて約3時間。
時刻は午後5時を回っていた。
まだ日は残っているものの、傾き始めている。
そんな中、俺達は映画館のすぐ隣にあるコスモワールドに向かっていた。
「なんか遊園地って久しぶり~」
手を広げて、向かう途中に抜ける公園を走り回る椎名。
相変わらずテンションが高い。
「ゆうて小さいけどな」
「でも、ちゃんとアトラクションがあるって事は立派な遊園地だよ!あと来る人とにもよるけど」
「それは関係ないだろ」
他の遊園地に比べては小規模なものの、ジェットコースターやVRアトラクション、お化け屋敷やゲームセンターまであり、目玉の観覧車では、横浜を一望できる。
巷ではデートスポットと有名なこともあり、夕方から夜に駆けては観覧車からの夜景を求めてカップルが入り浸っている。
俺達も傍から見ればカップルだと思われていそうだが、椎名は置いておいて、俺は全くその意図と持っていない。
なにせ、チケットを貰った身だからな。
「遊園地なんて何年ぶりだろ~私」
「俺も2年前に行った以来だな」
遊園地、というかはやり2年前に行った場所には心にモヤが掛かる。
映画館もゲームセンターも、全部千束と行ったことがある場所だからな。
でも、せっかくの機会だ。それももうおしまい。心を入れ替えなければ。
「最初はジェットコースターでパーッと弾けて、その後にお化け屋敷で気持ちを引き締めてからお目当ての観覧車に行こう!」
「そうするか」
「なに~、なんか作くんやけに今日は優しいけど」
「別に普通だろ」
「いや、いつもだったら勝手に決めるなとか言ってくるし、もっと言い方強いよ?浮かない顔してるし」
「俺はいたって平常運転だ」
「え~、作くん私になんか隠してる~?」
「お前に隠すことなんて一つもない」
「まぁ、隠せないもんね。私と作くんの心は―――」
「はいはい、もう目の前にあるから早く入るぞ」
「あ、ホントだ」
タイミングよく目的に着いた俺達は早速場内に入る。
たまに勘がいい所があるよな椎名。口調とかの変化に気付くし、表情もよく見ている。
それくらい、普段から俺の事を気に掛けてるということか。
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