第21話 パパ活か!?

「んで、これをやれと?」


 考えていても仕方がないので、椎名お目当てのクレーンゲームの前で言う。


「そう!これを取って欲しいの!」


「はぁ……………取ったら満足するんだろうな」


「うん!超満足!…………まぁしてほしい事はもっとあるんだけど、とりあえずは満足かな?」


「あっそ」


 呆れたように返事をすると、俺は財布から100円玉を取り出しクレーンゲームの投入口に入れる。

 機械が軽快な音楽を流すと共に、クレーンの動かせる秒数のカウントダウンが始まった。


「いけ~!作くんフレフレゴーゴー!」


 途端、横から体全力を使って無駄に応援してくる椎名。


「うっせ~気が散るんだよ!」


「私が応援すればすぐ取れるって!」


「黙った方が取れるんだが?」


「嘘だぁ~!絶対私の応援があった方がいいって~!」


「いいから黙ってろ!」


 と、怒鳴りながら目の前に集中するが、


「あ…………」


 取れなかった。


「ほら~言ったじゃん~。私が応援したほうがいいって~」


 自慢げに言う椎名だったが、いくらこいつが応援しても、

 100円、100円、また100円……………

 全く取れる気配がなかった。


「もっと、お尻のほう掴まないと取れないよ!?」


 次第に椎名は、応援から俺への指導へと変わっていった。


「んなこと言われてもなー」


 クレーンゲームなんて、友達と来た時に少しやるだけで初心者なんだよ。

 プロじゃないのに、正確に狙えるかよ。


「違う違う!そこは滑っちゃうでしょ?もっと尻尾のほう掴まないと」


 操作しているのにも関わらず、俺の腕を揺さぶる椎名に、


「お前の頭掴むぞ」


 チッと舌打ちをしながら言う。


「ん?なんか言った?」


「いや、なんでもないです」


 咄嗟に出た本音を、冷や汗を浮かべながら誤魔化す。

 誰のせいで的がズレてると思ってんだよ。正確に狙って欲しいんなら俺の腕を振り回すなよ。


「あの~、俺にアドバイスをするより自分で取った方が早いしお金もかからないんじゃないか?」


「お金は心配しないで?ここに沢山あるから!」


 椎名はバッグを探ると、銀行の封筒を取り出した。


「なんだ、これ」


「これ?これはね~、作くんに貢ぐ為のお金なんだよ~」


 封筒の中から帯付きの札束を取り出し、笑みを浮かべる。


「ちょ、ちょと待て!俺に貢ぐどうこうは置いておいてその金どっから用意した!」


 こいつまさかパパ活とかしてお金稼いでるんじゃないだろうな。

 じゃなきゃこの札束はおかしい。バイトをしてたとしてもすべて諭吉の札束が女子高生から出ていいわけがない。

 それに、こいつがバイトしてるなんて一回も聞いたことないし。


「あ、このお金?私が稼いだんだよ全部。作くんの為に」


「違う、俺が聞きたいのはどうやって用意したってことだ」


 これでもし、パパ活などをしていたら流石に止めてあげなくては。

 いくらこいつの事が嫌いとはいえ、間違った道は正さなければならない。

 幼馴染だからではない。人間としてだ。


 まぁ、俺が言ったところで、これまでも俺と付き合ってると勘違いしている行動を正そうとしても直らなかったから効き目があるか分からないが。


「あー、作くんに言ってなかったっけ?」


 椎名はスマホを取り出し、とある画面を見せてくる。


「なんだこれ」


「雑誌の表紙だけど」


「なんで雑誌の表紙を…………………ってこれお前か!?」


「そうよ、気付くの遅くない?」


 俺が見せられた雑誌の表紙には、モデル『椎名雪穂』とハッキリ書かれていた。

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