第58話 なんか興奮する
「作くんと私と話したかったわけ?」
半身こちらに振り返ると、腰を曲げて俺の顔を覗き込む。
「お前と同じ内容じゃないかもしれないけどな」
「それはまだ分からないじゃん」
「これまでの経験上分かるわ」
「色々経験不足だからね、作くんは」
体をもじもじさせながら、左手で輪っかを作り、右手の人差し指をその輪っかに出し入れする。
「その経験は今関係ないだろ!」
俺だって経験くらいはあるぞ………2回くらいだけど。
経験不足だからってなんだ。今の時代経験がない方が可愛がられたりする時代だぞ。
「え~、でも……………今回は作くんの思ってる事と違うよ、多分」
「絶対で頼むそこは」
「まぁ、後から分かることだよ」
「だな」
椎名が何を話すか、なにをしでかすか、俺には全く分からない。
だけど、今回ばかりは大体の予想は付く。あの顔をする時は、真面目な話だ。
「作く~ん、まぁお互い話すことがあるって事が分かったからさ~」
と、右斜め前を指差し、
「お化け屋敷、行かない?」
「結局行きたいんじゃないかよ」
「えへへ~、だってせっかく来たし~?やっぱ行かなきゃ損でしょ~」
「別にどっちでもいいからなー俺は」
正直、お化け屋敷はあまり得意ではない。
ホラーゲームや、ホラー映画、はたまた廃墟は心霊スポットには余裕で行けるが、お化け屋敷だけは乗り気がしない。
幽霊などはいないものだと思ってるし、ゲームや映画は画面の中だから怖くない。
しかし、お化け屋敷は人がいる。飾り付けがどれだけ怖かろうが、故意的に脅してくる人間の恐怖には勝てない。
「私は、作くんの驚いてる所を見たいだけだけどね~」
「悪趣味すぎるだろ」
「だってぇ~、怖がってるの見るとさ~?なんか興奮する」
不快な笑みを浮かべてよだれを垂らす椎名。
「いきなり性癖を赤裸々に語るな」
「あとは普通に作くんにキャッって言って抱きつきたい」
「お化け屋敷を本来の楽しみ方をするって考えはないのか?」
「ないね」
「なら入るのやめよう」
嫌な予感がするので、お化け屋敷と反対方向に向かう俺。
ビビる所なんか見られたら動画を撮られて後からいじられること間違いなしだ。
そんな事されたらいつものウザさに100倍マシでウザくなる。
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