第32話 毎晩出来るよ?

 そんなブチキレる俺を構いもせず、


『作くん私が出てる雑誌買ってくれたの!?』


 声が明るくなる椎名。


『早速作くん買ってくれたんだね!やっぱ私のこと好きなんじゃ~ん』


『この声でキレてるって分からないのかお前は』


『雑誌の私がカワイすぎて声を荒げてたのかと』


『そのポジティブ精神だけは尊敬するよ』


 どこまでお気楽なんだよお前は。


 そんなメンタルしてるんだったら、もっと役立ててほしいものだ。


『で?どう説明するわけ?』


 改めて雑誌の件について聞く俺。


『インタビューの人に聞かれたことを答えただけだよ?』


『んなことは知ってるんだよ。あの返答の内容を聞いてるんだ』


『返答って、普通に答えただけだけど?』


『幼馴染の恋人がいるって?』


『そう!作くんの名前出さずにだけど紹介しちゃった!』


 キャーっと乙女らしく叫ぶ椎名。


『―――――ざけんな』


『ん?どうしたの作くん』


『ふざけんじゃねーよ!』


『え、なに。ん?』


『世間に嘘を公表するなそろそろ俺と付き合ってるって妄想をするのをやめろ!キレるぞ!』


 怒鳴り散らす俺に、


『もうキレてるじゃん。てか毎回だし』


『当り前だろ』


『でも~、それなら作くんが認めた方が楽なんじゃないの~?』


『は?むり』


『だってさぁ~私が折れないのは分かってるし~。作くんが付き合ってるって認めるほうがいいんじゃないのかなーって』


『なんで俺に不利しかないんだよ』


『利益はすごくあると思うよ?』


『なわけないだろ』


『もし、私と付き合うんだったら~』


 一息つくと、


『毎晩、エッチが出来るよ?』


 甘い声で、少し吐息を漏らしながら言う。


『付き合う前に人のベット入って襲おうとした奴がなにをほざいてるんだ』


 付き合うとか関係ないし、俺がこいつに心を許したら容赦なく襲ってくるだろ。

 朝昼夜関係なしに、俺のことも考えずに。


『ちぇ~、作くん釣れないな~』


『お前は頑なだな』


『私、作くんのくっつき虫なんで』


『別に自慢することじゃねーよ』


 いっそセミにでもなってくれ。7日でぽっくり逝くから。

 今のこいつは蚊とかヒルだな。いくら追い払ってもくっついてくる。


 でも、それよりしぶといな。殺虫剤をかけても死なないから。

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