★★★ Excellent!!!
○冒頭の光景に目を奪われる 伊草いずく
男が一人、森を歩く。
目に光はなく、視線は定まらず。
足取りもどこか危うい。
精霊の導きのもと一つ向きへ歩いているにも関わらず、朦朧。
光ささぬ深い暗闇、その只中をさまようかのような不穏さがつきまとう。
事実、男の心は光をなくしていた。
今にも崩れ伏しそうな困憊も、主因は精神の消耗によるもの。
肉体以上に、その心が傷つき、力を失っていた。
――妻子をなくした。係累も。
戦火に巻かれたのだ。
都に出ていた彼のみが生き延びた。不運にも。
今まだ心臓が鼓動を打っているのは、末期の妻が口にした願いを叶えんとするため。
しかしそれだけでは、生き続けることは難しい。
喪失の傷が未だ、愛する者の体温を覚えているこの時には、なお。
生死のはざかい、はかない誓いを杖にかろうじて歩き続ける男。
その瞳が、不意に動く。
前触れなく眼前に現れた景色を前に、つと、焦点を結ぶ。
そこには――。
――――
ネット小説は、作者と読者が一から信頼関係を築いていく(破綻したらブラバになる)しろものだと思っています。
プロローグでこの先の光景に辿り着いて、お話の作者さんを信じられたなら、まずはおやつ代わりのビーツをどうぞ。
大丈夫、ちゃんとした料理人がおいしく仕立ててくれた調理済みです。作者さんと同じくらいには、信頼できる男のひと。
ただ、お腹が不用意にすいてしまう可能性にだけは、ご注意を。
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