サービスが終了したゲームの世界はどうなるのだろうか?
登場人物たちや、敵味方のモンスターたちはどうなるのだろうか?
フィクションの産物? でも、もしも彼らが、その世界に実在していたら?
本作は、サービスが終了したゲームの世界で、今も存在する者たちの物語です。
人々から忘れ去られ、崩壊の道をたどる世界。
終末のもの寂しい世界観が、圧倒的な文章力で描かれています。
登場する三にんのキャラクターは個性的で愛らしく、会話劇が賑やか。
終末に在る者たちのしたたかさが伝わってきました。
長編作品のスピンオフですが、短編でも物語の雰囲気を十分に味わえます。
終末ものや、独特な世界観を楽しみたい方にオススメです!
サ終したゲームの中に残されたものたちは、プレイヤーが去ってしまった世界で、どうなるのだろう?
その世界に未来という名の先は無く、ある日突然本当に無になる終わりが来るのかもしれない。それがいつになるのか、こちらの世界の終わりまで来ないのか、ゲームの世界の中で生きるものたちは誰も知りません。世界を作った“神様”だって知らないかもしれません。
そんな、神様から見捨てられた終わりの後の世界を、心が壊れた女の子【フィー】と、AI搭載のネコのぬいぐるみ【エメロディオ】と、ちょっぴり捻くれた神様嫌いの天狼【リレイ】の三にんが旅する物語です。
ゲームの中の世界という大枠は近未来的ですが、洗練された言葉によって描かれる終わりの後の世界は、絵本を読んでいるかのように幻想的で、読む人の心に儚く物哀しい、けれど焦がれるような美しい景色を映し出します。一万字未満でこの広く深い世界観を描き出す筆致が素晴らしいです。
さて、今回のお話は、フィーが大事にしているクマのぬいぐるみにスポットライトが当たります。なんと、このクマちゃん、歌うらしいことが判明! 絶妙なバランスを保っていた三にんの関係に、緊張が走ります。特に歌魔法を使うリレイは、クマちゃんが気に入らない様子で……。
フィーの願いを叶えるため、クマちゃんの歌を取り戻す小さな冒険の結末は。読み終わる頃には、優しい歌が聞こえるはずです。